行く末トーキー

はじめからはじめよ

渡す ― 新作歌舞伎 刀剣乱舞 月刀剣縁桐

ああああああああああああっっっっっっっっっっつい

思わず太字にしてしまうくらい暑い。立っているだけで汗がダラダラ流れる。

鑑賞の記録

何を思ってマチネを取ってしまったんだろう。なんかまだ身体が熱を持っている気がする。

※ 普段刀ステを見ている人なので、刀ステに絡めた感想が結構出てきます。優劣をつける意図はありません。

イヤホンガイド

歌舞伎初見ならあった方がよい!!!!! 静寂も含めて楽しみたい人にはちょっと不向きかな。

逐語訳というよりは、場面ごとに「この人がこんなことをしたよ」みたいな要約が挟まる感じ。歌舞伎に限らず日本史や日本刀の豆知識も教えてくれるのでとても助かる。

基本的に台詞がない時を狙ってくれるので「どっちを聞けばいいか分からん!」って状態にはならない。ただ歌(長唄?)には被る。歌が聞きたい時はちょっと工夫が要る。「こんなこと歌ってますよ」は教えてくれる。

あと、何も話していない時はホワイトノイズが乗るので、舞台上が静かでイヤホンガイドも話していない時は少し気になった。片耳から「サーーーー」と聞こえる。慣れればどうってことないんだろうがちょっと慣れなかったなぁ。かといって話し出すタイミングが分からないのでイヤホン外したり音量下げたりもできないし。

開演20分前から鳥海さんが話しているし、休憩中も1幕の要約やら松也さんのコメントやら流れるのでわりと休む暇がない。1階のお手洗いは電波が届かないけど、劇場出たところのめちゃデカ看板のあたりは届く。不思議。

雑感

歌舞伎は今まで一度も見たことがない。いやもしかしたら学生時代に芸術鑑賞教室的なイベントで1回くらいは……あった……かな……? でもあれは狂言だったかも。ともかく記憶の中にはない。正直異世界というか、ハードルが高いというか、こう……なんていうの? 何か強制的なきっかけでもなければ触らないだろうなというコンテンツだった。

なんて思ったらきっかけが向こうから歩いてきた。とうらぶ、本当にありとあらゆる方面への興味関心を広げてくれる。すごい。

とはいえ無知であることには変わりない。歌舞伎座のWebページ見たりたまたま流れてきたYoutube動画を見たりして予習に励むが、肝心の中身については何も分からない。時間・金銭の都合で1回しか見に行けないので思い切って初見でイヤホンガイドを借りた。本当なら1回目は何もなしで臨んで、2回目に解説を聞きたいんだが仕方がない。イヤホンガイドの内容、本当に参考になったから配信でも字幕で載せるなりなんなりすればいいのに……難しいかな……。

ちなみに永禄の変については刀ステ悲伝で仕入れた知識しかない。とうらぶハマってから日本史学んどけばよかったって数百回思ってる。

不安混じりで見に行ったけど面白かった! まさに異文化体験。ガイドにかなり助けられた。ガイドがなくても刀剣男士たちの台詞はほぼ聞き取れたかな。歴史上人物になるとちょっと厳しい。松永親子の会話が一番難しかった。そもそも「シンプルに『蟄居が不服だから義輝様討とうぜ』じゃ駄目なのか?」と思ってたので気が逸れたのもある。駄目なのか? 久直の覚悟がうまく読み取れなかった。雲居姫に額を割られるくだりはガイド含め音声が混み合ってて、そこで拾えなかった情報があるのかもしれない。額を割られるのはひどい屈辱ってのは理解した。

最初から最後まで場面も衣装もくるくる変わるので目が楽しい。場面転換どうなってんだ。さっきまで髭切だった人が紅梅姫になっておられる。早い。すごい。え、すごくない? 同田貫が久直に変わる時の傷の処理とかどうしてるの? あと最後の義輝様の隈取どうやって取ったん?! ちょうど三日月の背中と重なって見えなかった。額を割られた時の血は何か仕込んでるなって察したけど取るのは難しいじゃん。一体どうなってるんだ。手品か。遡行軍は飛ぶし客降りするし。今までで一番遡行軍を近くに感じた。

刀剣男士もそれぞれ「らしさ」があって、でも全然見たことがない表現で、動くたびホアアってなった。特に父上。どちらかというと母っぽかった。前半最後のわちゃわちゃシーンで「膝丸、おまえは髭切とふたりで一人前」や「同田貫、おまえは血気にはやり戦ってばかり」みたいな説教垂れるところは父っぽいけど、その後急に「やんのか?」てなるのは予想外。父上も戦ってこその存在なんだね。

そして!紅梅姫!!!!!紅梅姫さま!!!!!!こっち向いてください!!!!!!!!!!!お写真撮らせてください!!!!!!出てきてから最後まで紅梅姫さまにメロメロだった。メロメロにさせるらしい役どころ(赤姫)にメロメロだった。えぇ……あそこでなびかない三日月すごい……。とうらぶ派生であそこまではっきりした(刀剣男士も絡む)恋愛描写って初めて見たかも。いや禺伝が先か。禺は女性キャスト同士、歌舞伎は男性キャスト同士という正反対な共通点がある。

ね~~紅梅姫さま本当にかわいい。美しい。刀剣男士たちの舞を見ているシーン、腕がずっと上がりっぱなしですごい。お人形さんみたい。舞もすごいけど紅梅姫さまに目を奪われてしまう。

全員男性だと分かってても、紅梅姫さまや雲居姫、柵さんを見ていると「本当に?」って疑いたくなる。紅梅姫さまと髭切が同一人物なのマジで???? 4月の明治座で加賀歌右衛門を見たのもあって、あんな感じをイメージしてた。ちゃんと女性に見えるけど、男性が演じていることも同時に理解できるというか、宝塚の逆というか。でも全然違った。これが一番のびっくりだったかもしれない。え、男性? オペグラで見ると男性だなって思うけど、立ち居振る舞いと声だけなら女性では? 本当に男性なの? あんなにかわいい紅梅姫さまが?????? 本当に?????? まだちょっと疑ってるよ。信じてないよ。だって紅梅姫さまがかわいい。嘘だろ。むしろ男性だからこそ理想化された純粋なお姫様を演じられるのか? いやしかし……紅梅姫さま……。

紅梅姫さまだけでチケ代の元取れる。

逆にちょっと残念だったなーと思うのが義輝様と小狐丸。永禄の変が題材だから当たり前だけど義輝様がめちゃくちゃ出る。その分小狐丸の出番が控えめ。小狐丸、せっかく歌舞伎とも縁の深い刀なんだからもっといろんな姿が見たかった。もったいない。これなら兼役ではなくそれぞれ別の人が演じた方が小狐丸の活躍シーンも描けてよかったんじゃないかなぁ。メタな意味でも「だいたい全部三日月のせい」なのは笑ってしまったけども。どこの本丸も三日月のせいで大変な目に遭ってる。

義輝様と三日月の立ち回りは圧巻だった。付けが鳴る時と鳴らない時の違いはよく分からない。普段舞台で殺陣を見る時は効果音で剣戟が足されるから、あの何の音もない時間が意外性もあってとても印象に残っている。三拍子も含めて。三日月の悲しみみたいなものが伝わってくる。どうやったって義輝様に勝ってしまう。勝たねばならない。なすべきことをなしているんだけど、それだけで収まらない感情がさ~~言葉にならん。悲伝が見たくなってきた。

まぁ一番は紅梅姫さまだけどな!!!!!

そうそう、話は変わるんだけども。

筋書きや幕間のコメントで、松也さんは「なるべく古典歌舞伎に寄せて作った」と繰り返してた。ということは、ガイドがあれば私も古典歌舞伎を楽しめる……のか……? という気分になっている。ガイドなしではまだちょっと厳しいけど場数を踏めば分かるものも増えるはず。ちょっと興味出てきた。こうして違う世界への道を開いてくれるとうらぶが好きだし、とうらぶが歌舞伎と出会ったことで日本刀と同じ時間スケール(100年200年単位)を持てたのも嬉しい。今度はどんな世界に繋げてくれるのかな。楽しみだ。