行く末トーキー

はじめからはじめよ

聴こえる? ― 虚構の劇団「ピルグリム2019」

さて、問題。オアシスはどこでしょう?

観劇の記録

  • タイトル:虚構の劇団 第14回公演「ピルグリム2019」
  • 日時:2019年3月1日 19時
  • 場所:シアターサンモール

花粉症の症状がひどくて3分に1回くしゃみは出るし鼻水は出るというか流れ続けてるし、なかなか観劇には向いていないなぁと思いながら席につきました。最悪の場合ハンカチをダメにする予定で古いやつ持ってきたレベルでひどかった。でも、見ている最中は1回もくしゃみが出なかったし鼻水もいい感じに留まってたのでやっぱり劇場の効果はすごい。終わった瞬間に流れ出しました。汚いね、ごめん。

そもそもなんで木材のイチャイチャに人間が巻き込まれなきゃいけないんだよ...ああ...。

それはともかく、無理を押して見てよかったです。東京でもまだやってるし、地方公演もあるみたいなので、余裕があれば見に行ってほしい~~~~な~~~~~~? 当日券も出てるよ~~~~~~~? なお、見に行く際は前情報を入れずに行ったほうがよさそう。

虚構の劇団 | 虚構の劇団 第14回公演「ピルグリム2019」

座席位置

後方のドセン。座ってみたら誰がどう見てもドセンだったのでテンション上がった。前にサンモール来たときとそんなに列は変わらないんだけど、センターというだけで近く感じたからなんか不思議な気分だ。

雑感

※ 何年か前に上演された作品の再演?らしいんだけど、前知識は何も入れてないまま見てます。あと役名や固有名詞は聞き取れたまま書いてるので違うかもしれません。

なんか体力使った...。引き込まれる、とはちょっと違うんだけど、見ながらいろんなことを考えたから疲れた。出てくる要素に無駄がないから、1つでも見落としたくない、って思ったんだよね。だからもう取りこぼすまいとものすごく集中した。多分。

この作品の要素に「つながり孤独」っていうキーワードがある。SNSが発達して交友関係が広がったように見えるんだけど、実際は相手の投稿を見て孤独を感じる機会が増えた...っていうやつ。これをキーワードに入れた作品をサンモールで上演するっていうめぐり合わせが素敵だな~って思った。他のキャリアがどうかはわからんけど、私のスマホはサンモールのロビー奥(お手洗い周辺)から客席が圏外なんだよね。つながり孤独とかいう前にそもそもつながらない。ある意味で本当に孤独なんだけど、見ている最中は全く孤独なんて感じない。誰とも話していないし、相手の様子もわからない。作中では「大勢と一緒にいるほうが孤独を感じやすい」という台詞がある。客席の中の私は「大勢のうちにいる1人」だ。でも全然孤独じゃない。孤独ってどういうことなんだろう?

「オアシス」「ユートピア」「ディストピア」とか「目に見える自分/目に見えない自分」とか「生贄」とか「つながり」とか、そういったキーワードを何度も何度も角度を変えて出てくる。でもこれら全部が1つのことを表しているような気がするんだよな...。まだ「それ」が何かはわからないんだけど、なんかもう少し掘り下げられそうな気がする。終わった瞬間は何かを掴んだように思ったんだけどなぁ...帰ってきてこうして文字にするまでに失われてしまったようだ。なんて儚いんだろう。すごくありきたりな言い回しなら「人と人との繋がりは何か?」っていう問いかけなんだけど、もうちょっと...こう...違うものだったはずで...。言葉が届く、言葉が聴こえる、言葉が受け取れる、ってどういうことなんだろう?、みたいな感じだった。多分。うーーーーーん難しい...。

オアシス/ユートピア/アジュール*1を目指していた彼らは六本木先生が生み出したキャラクターのはずだったのに、先生の意思を越えて自由に動き、話す。黒マントは「彼らにも選択する権利がある」と諭す。もしかしたらあれは「目に見えない六本木先生」たちだったのかなぁってなんとなく思った。タンジェリンにはモデルになった人物がいたからちょっと違うけれど、ハラハラやマッドサイエンティスト、奴隷、短命族の姫はどうだったんだろう? どれもちょっとずつ「目に見えない六本木先生」で、ちょっとずつ「目に見えない他の誰か」だったのかな。こうしてちょっとずつ混ざっていくことが「本当の繋がり」の正体なのかもしれない。

演出かどうかはわからないんだけど、途中で舞台のセットがちょっと取れる・ちょっと妙なタイミングで動くことが何度かあった。鏡の洞窟で鏡が取れたり、ユートピアの背景にあった半球の飾りが取れたり、なんか唐突に矢が降ってきたりした。なんかそれが余計にこの世界の脆さを感じるきっかけになったなぁ。六本木先生が作り出す小説の中の出来事なんだ、って思った。最後まで風船が残っていたのは、小説の世界が現実に侵食しているようで少し怖くもあった。ある時偶然黒マントに出会ったように、彼らの世界は思ったより近くにあるのかもしれない、なんてね。

う~~~~~~~んいろいろ書いてみたけれどなんかこうどれもしっくりこない...。頭の中には何かこうイメージがあるんだけど、それを表す言葉が出てこない。届く届かない以前の問題だなぁ。ちゃんと言葉にして「聴こえる?」「届いてる?」って言えた直太郎はすごい。私の中ではもう届かないんだろうなっていう予感がするんだけど、彼は多分諦めないと思う。先生が起きるまで毎日お見舞いに行くし、毎日言葉を発信するだろう。いつか目に見える彼らと繋がれると信じてるんだろうなぁ。

おわり!

*1:だと思うんだけどちょっと自信がない