行く末トーキー

はじめからはじめよ

ああ ― 「死神の精度 ~ 7Days Judgement」

なんかいきなり秋来た感あるね

観劇の記録

  • タイトル:死神の精度 ~ 7Days Judgement
  • 日時:2018年9月3日 19時
  • 場所:あうるすぽっと

よしなしごと

なんか舞台見たいな~と思ってたら、こちらの記事が素敵だったからなんとなく当日引換券買いました。

korilakku.hatenablog.com

こりらさんの文章、読むと「行きたい」って気分になるので不思議です。書いてる目的が違うからかもしれないけれど、私の文章だとこうはならなさそうなんでちょっと羨ましいです。

とまぁ舞台そのものの感触が掴みたかったら、こりらさんの記事を読めば大丈夫です。こっからは私が考えるための文章なので。

原作は何年か前に読んだはずだけど全然思い出せなかったので、数日前にさらっと読み返した程度です。伊坂幸太郎作品、なんか狂ったように読み漁る時期と、そんな作家全然知らないでーすって素通りする時期を繰り返してる気がするんだよな…。3年周期くらいで読みたくなる。

座席位置

真ん中の下手。当日引換券の割に思ったより前方だったけど、端に寄ってたのでまぁこんなものかなぁ、という感じでした。

雑感

千葉、立体になるとめっちゃうざいな…w

伊坂作品の好きなところが「超常現象がごく普通に存在してる」っていうあっさりさなんですね。何もないどころか結構なことが起きてるんだけど、極めて「なにもない」に近い文章。死神の精度だって、普通あの言動をする謎の男が現れたらもうちょっと警戒すると思うんだ。でもなんだかんだで藤田も阿久津も慣れてしまう。あのさらりとした穏やかさをたまに摂取したくなるのかもしれない。

だから、あの「なにもないように装った穏やかさ」をどうやって舞台に表すのかなぁと期待していた。

全部見終わって、千葉がいい感じに違和感を出しながらも概ね何も起こらずに終わった(起きてないわけじゃないけれど、そこの描写を省いていた)ので、なんか「やっぱりこれ伊坂作品だな~」というところで落ち着いた。ミューゥジック!

千葉が「人間のことに悩んでる奴なんて1人もいない」というように、藤田も阿久津も、自分と相手で閉じた関係に悩んでいた。これをもっと…大げさに?描くこともできるけれど、悩みのサイズをそのままに保ってたように思う。それが余計に、死神と対比したときの人間の小ささみたいに見えてきた。

登場人物は千葉・藤田・阿久津・同僚*1の4人で、4人とも声の響き方が全然違ったのもおもしろかったなぁ。ちょうど昨日朗読劇を見たばかりだから、声への感度が上がってたのかもしれない。藤田が最初出てきたときは、ちょっと聞き取りづらい…かもしれない…と不安になった。でも不思議と慣れれば拾えるからすごいなぁ。千葉の朗々と響く声、阿久津の表情豊かな声、同僚のちょっとひねくれた声。声がその人を表しているようでちょっとおもしろい。

最初からずっと雨が降っていて、藤田が助けに来たところで後ろのドアがバーンって開いてずぶ濡れの藤田が立ってる、という構図がいかにもな「任侠の漢」で好き。そこで持ってるのが日本刀というのがまた…! いつの時代に流行った映画だよぉ!!!!!!(好き)

あんだけかっこよくても、次の日に交通事故であっさり死ぬんだから、人間というのはよくわからない。人はみんないつか死ぬ、それだけが確かだ。

あの2人は、きっと「信じる」という言葉と、「奥入瀬に行く」という約束だけで、互いに何を言いたいかはわかってたんじゃないかなぁと思う。だから奥入瀬に行く前に藤田が死んでも、不思議と悲しいとは思わなかった。行ったら行ったでまた何か違ったかもしれない。けれど行けなかったんだからしょうがない。阿久津がちゃんと証言できるのかはちょっと不安だけど…。

千葉と藤田が話しているとき、藤田が特に意味もなくドアを開けて、しばらくしてから閉める。そのとき、舞台の上手には阿久津がいる。話の流れから考えると、阿久津は多分コインランドリーが終わるのを待っているところだ。けれど私は、あのドアのすぐそば、けれど藤田には見えないところに座ってたように見えた。藤田もそれがわかっていて、ドアを開けて話を続けたのかもしれない。であれば、本当に伝えたかったこと、本当に知りたかったことはもうあの時点でわかってたんじゃないかな。これは私の希望だけどね。

千葉はきっと、青空を見たことを忘れてしまうと思う。彼らの記憶がどういう仕組みになってるかはわからないけれど、なんとなくそう思う。藤田と阿久津のことも、何人か見てきた「やくざ」のうちの誰かとして薄れていってしまうだろう。それが彼の仕事だから、そこに感傷を持ち込むのはちょっと違うような気がする。そんで、また何かの機会に青空を見て「やべぇ!」と切羽詰まればいい。それから「ああ」というなんとも言えない相槌をこぼして、ストーンズのイントロを思い出せばいいんじゃないかなぁ。

帰り道、電車で居合わせた人がスマホでプレイリストをスクロールしていた。死神はミュージックが好きだけど、試聴ができるようなCDショップはだんだん少なくなっていく一方だ。彼らの仕事の張り合いがなくなるんじゃないかと少し心配になった。まぁ、その時はその時で違う方法を考えそうだけどね。

*1:名前出てた?