行く末トーキー

はじめからはじめよ

「めくり」のない世界で ― 演劇ドラフトグランプリ2023

ちょっと会場電波弱いよ!何やってんの!

鑑賞の記録

  • タイトル:演劇ドラフトグランプリ2023
  • 日時:2023/12/05 17時
  • 場所:日本武道館

人生初の武道館! 一応近くに寄ったことはあるけど中に入ったのは今日が初めて。お手洗いにスクリーンが下ろされてて何かなーと思ったら恐らく男性用を転用したらしく目隠しだった。気遣いが行き届いている。

電波が弱い!!!!!!!!!!まぁ私は格安SIM使ってるせいか普段からパケ詰まり起こして10分くらい繋がらないことも多くて慣れてる(し諦めもつきやすい)けど、周り見た感じそこそこの人数が繋げてなかったっぽい。会場投票制度入れといてこれはさすがにない。多分、配信と現地では票の寄り方全然違うと思うんだよね。そこを拾えないのはあまりにも惜しい。現地でも座席によって傾向違いそう。

投票について、私は「それぞれの劇団が(武道館以外の劇場で)今日の演目を再演しますのであなたを招待します。席は選べますがチケット代は払ってください」と言われた時にいくら出せるかを考え、一番高いところに一票投げました。だってどれも心動くし面白かったんだもん。

びゅ~

トップバッターは難しいよなぁ……と最後まで見てしみじみ思う。順番が違ったらあるいは違う評価になったかもしれない。というか最近天叢雲剣に遭遇しすぎている。局所的ブーム。そんな気軽にお目にかかっていい存在ではないはず。

武道館に組まれたセットと演目に課せられたルールの活かし具合は一番だった。巨大スクリーンがあるから手元で小さな映像を流しても大丈夫だよね!とか、演者が持ち運べるサイズの道具なら持ち込めるから天岩戸はテントで表そう!とか、創意工夫が凝らされてた。しかし客への要求難度が地味に高い。「南東」「北西」みたいなブロックにいるとどっちに従えばいいかちょっと悩ましかった。でも気軽に神になれて楽しかったなぁ。

私はストーリーを重視しがちなので、そういう意味では既存の神話をちょっとアレンジした程度の本作は若干物足りなかったかな。冒頭の「母に会いに行く」も単独行でスサノオ周りの話を聞いてたからついていけたけど、そうでなかったら確かに序盤が長く感じたかもしれない。

国士無双

芝居がうまい。いや上手い以外の言葉が出てこん。

どうしても現実世界のあれこれと重ねて考えてしまう。その世知辛さも含めて味わえたらいいんだろうけど、私はまだそこまでの境地には至れない。最後に残ったしこりみたいなものを扱いかねている感じ。普段の観劇ならこのしこりを抱えて帰り道にじっくり考えたりするんだけど、今回は次々に新たな作品が出てくるからその余裕がない。初めて刀ミュ2部を見た時の「ちょっと待ってまだ1部噛み締めたいんだけど?!」の戸惑いに近い。

あの後少年はどうするんだろう。「いい子」でいたところで生きていられない。生きていてこその「いい子」なのにどうしてルールは変わらないんだ?

話の中身で言うと「サンタは痛みを感じない」の使い方があまりにもズルすぎた。ブラックサンタ(長妻さん)の温情を感じるほのぼのシーンから一転、シリアスなクライマックスに効いてくる。そういう細かな作り込みが好きだったな。トナカイたちが小銃を知らないとかもそう。あと「悪い子にプレゼントを渡さない厳しさ」もさ~~~~ズルいわ~~~~~。知っている事柄に新たな側面を足されると軽率にグッと来てしまう。

ところで私の昼食ハンバーガーだったんですけども。どうしましょう。牛肉100%のはずですが……これは……。

品行方正

最初から最後まで大事件。好き勝手にやりたいこと全部やります着いてこれない奴は置いていく!という清々しさを感じた。ここまで振り切ってるとむしろ笑えてしまう。

ドラフト会議の様子とか、演者(特に廣野さん)の治安が悪いとか、座組に付属する情報を知っているからこそ楽しめた部分は大きい。逆に言うと「演劇ドラフトグランプリ」という文脈を外すと訳が分からなくなりそう。品行方正は「演劇ドラフトグランプリ」というイベントに全力で乗っかった座組だった。

しかし一体何を見せられてたんだろう? 見てる最中はめちゃくちゃ笑ったが今思うと何が起きてたか分からん。それもコメディの面白さではあるんだけどね。この頃になると客席もだいぶ暖まっていて、演者の動きをひとつひとつ拾って返す余裕が出てきた。やっぱり順番は大事だ。

数段構えのオチの1つ1つで「これで終わりかな?」と若干意識が現実に戻ってきた緩みがちょっと惜しかったかな。最後までグワーッと連れ去られたかった。

一番星

一方でメンバーの特技を活かしつつコメディらしいコメディを持ってきたのが一番星。個人的にはライブシーンより話の続きが見たかった~~~。一旦みんなで角刈りになって「角刈りでもアイドルやろうぜ!」って挽回図ったりしてほしかった。設定が面白くていくらでも広げられそうだからこそもったいない。角刈りのアイドルがいたっていいじゃん。

アイドルになった5人はさすがの一言に尽きる。「求心力がありすぎて弾圧された」という経緯を今回のプロデューサーである荒牧さんに言わせるところが良い。俳優とアイドルはちょっと違うものだけど台詞ひとつひとつに感じる説得力が違った。

脚本演出は川尻さんだから的外れな感想かもしれないが、良くも悪くも荒牧さんの色が出たなーという印象。優等生で努力家で、周りの要求をできる限り叶えようとひたむきに努力する。それが彼の美点でもあるんだけど、ここぞという強みみたいなものがちょっと薄い……ように思う。「俺はこれを見せたいんだ!」という我の強さがもう少しほしい。涼星くんくらいぶっ飛んでくれてもいいのよ。

久しぶりにバキゴリダンス見れたのはちょっと嬉しかった。定期的に摂取したくなる。欲を言えば生歌で聞きたかったなー。

恋のぼり

今回の優勝チーム。わかる。これは勝てる。

確か品行方正へのコメントで「漫画の『めくり』みたいに次に何が起きるのかワクワクする」みたいな内容があった。でも、これは「演劇」を披露する場で。つまり舞台の上と客席とが同じ時間、同じ空間を共有している。どれだけ続きを知りたくなってもページはめくれないし、飽きたとしてもそう簡単には立ち去れない。あの強制力と、ちゃんと最後まで見てくれるという信頼をびしばし感じる作品だった。

そして最後の萩さんの表情がさぁ。ちょうど肉眼で捉えられる席だったからもう大変で。あの席だからこそ見れたものの価値は計り知れない。引き換えに玉城さんの反応は見えずじまい。あの表情だけで1万出せる。反対側に座ってもう1万。そういう、一期一会の輝きを求めて劇場に足を運んでるんだなぁと再認識した。あの席でよかった。

話も良かったし、国士無双の時は扱いかねるばかりだったしこりも、こちらは最後だったので投票中などに転がしてみる余裕もあり。あの最後の告白、どういうシチュエーションだったと思う?

総評

面白かった! 去年どうしても都合つかなくて悔しかったから頑張って調整した甲斐あった。配信で見てたら、席が違ったらまた別のチームに投票したと思う。演劇面白いな。改めて「観劇」という行いの面白さと、かけがえのなさを実感した。

この大規模イベントのプロデューサーとして「荒牧慶彦」の名前があるのも嬉しい。彼に寄せられた信頼が目の前に広がってるし、その一部に自分も加えられている。これはとてもすごいことだ。1人の演者として活動していた頃に比べたら責任の重さも段違いだろうけど、これからも頑張ってほしいなぁ。

多分今年の荒牧さん現場はこれで終わりかな? あとはニコ生があるくらい、多分。もう2023年終わるね。早い~。現場自体はもうちょっとあるのでまとめ記事はいつも通り12/29に書きます。