行く末トーキー

はじめからはじめよ

あえて選ぶ一皿 ― ミュージカル「I'm donut ?」

もうすっかり夏だねぇ。いかがお過ごしですか?*1

観劇の記録

  • タイトル:ミュージカル「I'm donut ?」
  • 日時:2023/06/25 13:00
  • 場所:Mixalive TOKYO Theater Mixa

シアターミクサ初めて来た*2。なんか狭苦しくて難しい場所だね。椅子も思ったより深いというか、背もたれがちょい低めな映画館の椅子って感じ。ホールに至るまでの動線とかも相まって「3分の1サイズになったヒューリックホール」みたいな印象を受けた。

雑感

いやドーナツとコラボって何?!?!?!から始まった作品。チェキ会でドーナツもらった時もびっくりしたけどミュージカルになるのはもっとびっくりだよ。荒牧さんを見ているとトンチキが絶えない。絶対飽きることがない。すごい。常にトンチキがたっぷり。

だから一体何が始まるのかなーとワクワク半分怖いもの見たさ半分で席についた。椅子の座面が低いから前の座高が高かったら大変なことになるんじゃないかとちょっと怖くなったが、私は大丈夫だった。そこそこ後ろの方だったのもあるかな。

めちゃくちゃ面白かった!とか刺さった!ってほどではなかった。でも最後に渡されるドーナツはどんな味なんだろうって楽しみになったし、ちゃんとした(ポップアップでない)お店にも行ってみたい気分になった。I'm donut?のいいところを知ってもらおう、好きになってもらおうって工夫があちこちに散りばめられていた。日経エンタの連載で、I'm donut?を作った平子さんは「ブランディングを大事にしている」と語ってて、この作品もI'm donut?ブランドの一部になったんなら嬉しいなと素直に感じた。

ドーナツって、別に食べなくても生きていけるし、食べるとしてもそこまで拘って選ぶものではない、と私は思う。コンビニでもスーパーでも大抵売ってる。ミ◯ドとかクリス◯ー・クリームとか、チェーン展開しているお店もたくさんある。その中から「あえて」I'm donut?を選ぶのって、なんか相当強い理由が必要なんだよね。どこでも売っているものでないからお店に足を運ばなきゃいけない。その壁を乗り越えてでも「I'm donut?のドーナツが食べたい!」と思ってもらうにはどうしたらいいか。

作中では「お客さんはきっと分かってくれる」と信じていつも通りドーナツを作る。でも多分現実では通用しない。あのシーンは「I'm donut? をすでに知っている人」がお客さんだからね。どちらのドーナツも知らない人にとっては、その時点で行列が出来ているライバル店の方が魅力的に見えるかもしれない。

そこで差をつけるのが、円がドーナツを特別に好む理由、つまりストーリーであり、ストーリーこそがブランドの核なのかなぁと。同じ時間を共有して、ドーナツにかける思いをじっくり受け取って、実際に口に運ぶ。チェキ会の時は「おいしいドーナツだぁ」くらいだったのが、今回はちょっと特別な意味を持ってたもん。もちろん味が違うっていう物理的な違いもあるけども。創作であっても「このドーナツにはこんな物語が込められています」という重みみたいなものがあった。美味しかったよ! これが舞台限定なのは惜しい。舞台終わったらもう売らないのかな。

マキアのなんかよう分からん小悪魔っぷり好きだよ。ドーナツひとつに掛ける熱量がちょっとおかしいけど彼は悪魔なのでしょうがない。試作品をポイポイ投げ捨てるところもちゃんと1個1個食べて反応してるから、彼は本当にドーナツが好きなんだろうね。100個ください(1回目)ももしかしたらライバル店登場で伸び悩む売上を救おうと……したのか……? いや単に食べたいだけかもしれない……。真意は彼のみぞ知る。浮いた存在と設定をきちんと落とし込んでお話を成立させる大事な役だった。

90分は最近の作品だと短めだけど、要点がギュッと詰まった良い作りだったなぁ。歌が上手い人の歌とダンスが上手い人のダンスと芝居が上手い人の芝居が存分にある(全部主観)。時間に余裕があれば見て欲しい……しかしチケットは全部売れてしまった……配信あるけど、この作品に限っては「最後にドーナツを受け取って食べる」まで含めて一つの体験だからなぁ……………ドーナツ通販しない?! しないかぁ。残念。うーーーーーーーもったいない。前売りで全部売れた(挙げ句高額転売もあったらしい)作品、人に勧めるハードルが高い。どうにかならんものか。

*1:カーテンコールで立石さんが「いかがお過ごしですか」と言い始めた時は今日イチ笑った。あなた方を見に来てますよ

*2:天守物語はコロナで行けなかった