行く末トーキー

はじめからはじめよ

届きますように ― MANKAI STAGE A3! ACT2! WINTER 2023

ご報告:座チョコ食べきりました

鑑賞の記録

  • タイトル:MANKAI STAGE A3! ACT2! WINTER 2023
  • 日時:2023/01/27 14:00
  • 場所:TACHIKAWA STAGE GARDEN

A3! リリース6周年おめでとうございます~~~~! 嬉しいね。AW2019の予習としてインストールしたのがつい昨日のように思えるがもう4年ほど経っているらしい。びっくり。

さあ今日も元気に立川の悪口を言っていこう。

ってところなんだけど、今日は運良く段差列だったので立川は命拾いした。埋もれだったら生かしてはおけなかった。ちょっと笑うだけで左右に限らず同じ列同じブロックの人全員が4DXになっちゃうとか、お手洗いの動線が謎だとか、終演後に劇場出た途端囲み取材もかくやの人混みに出くわすとか、言いたいことはたくさんある。ちなみにほぼ全部アンケートにも書いてる。毎回書いてる。反省しろ。立川で許されると思うな。許さない~~~~~~~(緻密なビブラート)

雑感

チケ代の大半を劇中劇に費やしている。あれだけに1万出せる。銀劇でやってくれたらドセンに8万出せる。原作ではそうでもないのにここまでハマるとは……。なんというか、誰も彼もが一方通行な思いを抱いてすれ違っているところにグッと来ているのかもしれない。ステあるあるのオリジナル設定でカールからクリスへの対抗心が追加されたことで一方通行度が高まったし、何よりクリスとエリックがさぁ…………!

エリックは最後クリスを友と認めてアリアを歌うけど、クリスは多分エリック本人ではなくエリックの歌しか目に入ってなくて。クリスは一貫して「歌が聞きたい」「舞台に立ってほしい」としか言わない。エリックの復讐心を肯定も否定もしない。ただ「舞台に立てなくなるから」リチャードへの暴力を止めようとする。一度話してみたかったとは言っているけれど、クリスはどの程度エリック本人に興味を持っていたのか……。歌への純粋な好意がエリックを救ったって解釈もできるけれどあまりにも切ない。

エリックはクリスを打ちのめすために歌を聞かせたと言っていた。けれどクリスの歌への執着はエリックの歌では折れなかった。むしろエリックの歌を取り込みさらに強くなった。その結果がラストシーンの幻聴(だと私は思ってる)だとしたら……なんか……あまりにも一方通行で……。どこにも行き着かない感情しかない。エリックの歌に取り憑かれたクリスが新たな「オペラ座の亡霊」になる話はどこで読めますか?

シトロンが帰ったショックで「今は何も考えられない」とまで落ち込んでいた綴くんが書いた本だって思うと、この当て所なさというか、ところどころに出てくる「届けたい」というフレーズもまた違った風に聞こえてくる。

衣装が白いからかもしれないけれど、クリスを見ていると「ブランクスレートみたいな人だなぁ」と思う。みたいな、であってブランクスレートそのものではない。歌への愛情や執着だけを持ち、それ以外が空白の人間。クリスを演じる紬も似たような存在だよね。演劇への執着心の強さと、それ以外の空白は通じるものがある。

結成当初は自分のことを話すのも覚束なかった冬組が、ガイに向かって自分の傷や過去を語ってみせる。5人で時間をかけて信頼関係を育て、出会って間もないガイに対しても話してもいいと思える心地よさを作ったのに、紬さんは「俺のことは板の上で感じてください」としか言わない。丞さんでさえ考え考え話したのに。丞さん、普通に話す時はつっかえるけど、ストリートACTを始めた途端いきいきし始めるの、彼らしいなーって思う(脱線)。

月岡紬ってどんな人なんだろう。演劇への執着心が際立っていて、それ以外がぼんやりとしていて。もちろんイベストとかメインストとかでいろいろな側面を描かれてはいるんだけど、何年経っても彼のことが分からない。オーディションに落ちて演劇を諦める、までは割とテンプレというか、そういう人いそうだよねって思うけど、紬さんは2年ほどの時間を空けて戻ってきた。戻ろうと覚悟するに至る直接のきっかけが今のところ(少なくとも私は)分かっていないから余計に輪郭がぼやけている。

原作だとそんな感じでぼんやりとしたイメージしか掴めないのに、荒牧さんが演じると急にリアリティを増して迫ってくるからすごい。相変わらず何もわからないのに、月岡紬は確かに存在する。なんだかすごいものを見ている気がしてきた。他の人に対しては「こんな人だったんだ!」みたいな気付きと共に解釈が深まったように感じるのに、紬さんだけは何も分からないまま何かを得ている。私は一体彼の何を得ているんだろう……? 何もわからないと感じているかが分かってきている……? 無知の知

哲学的な話はともかく。

受け売りの受け売りで「相手の身になって考える」という思いやりを知ったガイさんが最初に考えたことが「シトロニアは俺を哀れに思っていたのだろう」だったのが悲しいなーと思うなどした。そこで即座に否定できる紬さんで良かったなとも思った。あの「違います」が彼の自我を一番強く表している気がする。人の言葉を否定できず、ただ曖昧に流す場面の多かった紬さんが、ガイさんとまっすぐ向き合って「違う」と首を振る。あれこそが月岡紬のギャップだったのかなぁ。……と書いていて気が付いた。

なんだか不思議な感覚だなぁ。もう少しで紬さんのことが分かりそうだけど、永遠に分からないような気もする。別の人が演じる紬さんを見たらまた違ったものが見えてくるのかな。そう思うと、キャス変も少し前向きに受け取れそう。立川は永遠に分かりあえないし分かりあいたくもないです。

エリックの歌に取り憑かれたクリスに取り憑かれそうだ……あの後クリスはどうするんだろう……。