行く末トーキー

はじめからはじめよ

脚色 ― 舞台「憂国のモリアーティ」case 2

マチソワ間が地獄だと思ったけど実質1時間もなかった。あれで休憩していると言えるのだろうか。

鑑賞の記録

  • タイトル:舞台「憂国のモリアーティ」case 2
  • 日時:2021年7月25日 12時・17時
  • 場所:新国立劇場 中劇場

マチネ終わって劇場出たのがだいたい15時、ソワレの入場開始が16時。普段はどちらか片方しか見ないからあまり意識しないけど、たまにマチソワするとこの時間の短さに驚く。

ちなみに客席出て受付を抜けたところの階段脇にあるベンチはマチソワ間封鎖された。あそこもロビー扱いらしい。

座席位置

上手と下手、前方と後方。マチソワするにあたって一番理想的な取れ方をした気がする。

前方の段差がない席だとやっぱり多少は頭が被るけど、それでも見えなくてストレスってことはなかった。これが当たり前であってほしいんだがどうしてこうも見えない箱ばかり…………

雑感

  • 裏芝居

舞台真ん中にある橋の裏側でも芝居が続いているのにちょっとぞっとした。列車のシーン、橋の上でシャーロックが「おいジョン、マッチ」って言う頃にはすでに食堂車のセットがあって、ウィリアムたちが給仕を受けている。下手のかなり端じゃないと分からないと思う。

逆に上手にいる時は、食堂車のシーンで「隣の車両」が見える。緑のドレスを着た女性(その後事件の第一発見者になる)がチーズケーキらしきものを食べたり、乗務員と話したりするところが見える。作り込みが!細かい!

多分私が見えていない死角でも何かやってるんだろうなぁ。こういうの知るといろいろな席で何回も見たくなる。ご時勢が憎い。

  • 脚色

原作を頭から順々にやらなくても舞台は成立するし、結構おもしろい(と私は感じた)。もちろん、どの作品でも多かれ少なかれ「やらない」シーンはあるんだが、モリステは単純に「やらない」んじゃなくて、順序を入れ替えるという荒業を持ってきた。

たとえばジャック・ザ・リッパーの犯行声明が送られたのは1作目ラスト頃だと2幕冒頭で分かるから、その後の「ボンド(=アイリーン)が仲間になってまだ日が浅い」に説得力が出る。

逆にノアティック号の事件は「シャーロックとウィリアムは面識がある」と示すだけで、実際どんな事件だったかはバッサリ省かれる。この事件が舞台上の時間軸でどこにあったのかも明確には示されない。

この組み立て方が、ウィリアムの演出する「犯罪劇」に通じてくるっていうメタい構造がとても好き。何を伝えたいのかを決めて、それが一番伝わりやすい要素を抜き取って組み合わせる。「モリアーティ」がやろうとしていることをモリステでやるとこんな感じですよっていう入れ子構造めいたものを感じる。1幕の「Catch me, if you can」と2幕の「捕まえられるもんなら捕まえてみな」とかも繰り返しの要素だよね。大事なことは形を変えて何度も表現されるから、見ていて「ああこれは大事なんだ」とすぐに伝わる。

舞台化ってこういう作り方もアリなのか〜〜〜〜〜〜!!!!!って驚くと同時に感動した。1つの原作ストーリーに対してミュとアニメと……っていろいろなメディア展開がある中で「舞台ならではのあり方」を考えた結果なのかな。これはこれで面白いし、もし次があるなら何をテーマにして何が抜き出されるのか、結構楽しみでもある。