久々にすげぇもん見た……
観劇の記録
- タイトル:「私に会いに来て」
- 日時:2019年9月13日 19時
- 場所:新国立劇場 小劇場
座席位置
真ん中あたり。チケットの座席番号見た時は(クラブeXみたいな)変形舞台かな?と思ったけど、ごく普通のスタイルだった。前からA→B→C→Dでそれぞれのブロックに1~3列?がある感じ。なぜこういう番号なのかは不明。
椅子がなんかやけに座面ななめってる気がした。ちょっと足踏ん張ってないとずるずるっと滑り落ちてしまいそう。私が座ったところには薄手のクッションが置いてあった。
雑感
舞台以前の話
「殺人の追憶」という韓国映画があって、その原作舞台「私に会いに来て」を日本語に翻訳してちょっとアレンジしたのがこの作品。映画はPrime会員なら無料で見られるよ。タイトルの通り人が殺されるし暴力表現もたくさんあるから気をつけて。
いつものサムネ的なものはできなかった。
藤田さんが出るから舞台気になるな→じゃあ予習に、と見てみたらこれがまぁ自分の好みドンピシャで。なんとなくアジア圏の映画って足が遠のいてしまいがちだったのでいい作品に出会えて嬉しかったし、舞台でどう表現するのかなってすごく楽しみにしてた。
でもさ、舞台のサイトにある「ラブサスペンス」の「ラブ」はどこにあったんだ……??????ってのがちょっと疑問だった。
映画見れば分かるけどラブの「L」くらいしか出てこないからね。そしたら日本版独自の演出らしい。そういうのあんまり好きじゃない*1から、そこだけちょっと不安だった。
※ 今調べたら日本版独自ってどこで知ったのか分からなくなってしまった……違ったらごめんなさい。でもとりあえず映画だけでは「ラブ」とは????ってなるのは伝わるはず。
舞台の話
なんかすごいものを見た……。ってなった。久しぶりに感情がぐるぐるしている。
映画を見終えた時も「お、おう……」ってなったんだよね。ものすごく後味が悪い。そしてそれがいい。でも舞台だと後味の悪さの方向性が全然違って、かなり心に来る。いい作品を見ると帰り道に電車に飛び込むかしたいなーってぼんやり思うんだが、今回もそれだった。今この鮮烈な記憶を抱えたまま終われたらすごくすごく素敵だろうなって。まぁまだチケットいっぱいあるから死なないけど。
何も掴めないまま被害者だけが増えていって、刑事たちが追い詰められていく。最初は暴力を止める側だったキム刑事(映画だとソ刑事)が最後に爆発するまでの流れが本当に……なんだろう、言い方は悪いかもしれないけど泥臭いんだよね。何の匂いもしないはずなのに、たしかにそこに人の熱がある。人の匂いがする。手を伸ばしたら触れられそうなくらいに濃い気配がある。
チョ刑事はあくまでも自白させるために暴力を振るうのに対し、最後のキム刑事は本気で容疑者を殺しにかかってるんだよ。それがものすごく怖い。追い詰められたことで見える本性が怖い。もう何も信じられないというか、なんというか……。下手なホラーより怖い。そしてそこまでの経緯が分かっているからこそ、どうしようもなくなっていると分かるからこそ、本気で恐れることはできないというか。めちゃくちゃ怖いんだけど、そうなるのも分かる、って余地があることが余計に怖い。
ただ見ているだけなのに五感が刺激される。雨の冷たさを思い出す。ざあざあ降りの中を歩いている時のあの感覚。雨音しか聞こえなくて、自分の声すら確かだと思えなくて不安になるあの感じ。実際に雨音が流れる時もあるけど、そうでない時もずっと雨音が耳を塞いでいるようで落ち着かない。
人間の感情には熱がある。んだなって思った。本当になんかうまく言葉にできない……すごくぐるぐるしてる。終わった後一言も発せなかったもん。何がすごいのか分からないけど、引き込まれて飲み込まれてしまう。この体験を表す言葉がない。言葉を越えた感覚。でも、だからこそ、芝居を見る意味があるんだよな。言葉にできちゃうんなら言葉で十分だし。それ以外の、その場にいないと何も伝わらない温度とか感情を投げつけられて呆然としてるってのが今の心情に一番近い。
余韻とも違う。まだ雨の中に立ちすくんでいるみたいだ。ざあざあと雨音が耳を塞いでいる気がする。音楽より何より、雨音が心に残った。
まだ公演によってはチケットあるし、当日券も毎公演出るみたいなんで、暴力表現とか性的表現が平気な方はよろしければぜひ。私の言葉を越えてしまっているので、見た人がいたらその人の言葉でもう一度捉え直してみたい。
*1:日本版独自が嫌って訳ではなく、どういう形態であれ原作から改変が入るという事実があまり好きじゃない