行く末トーキー

はじめからはじめよ

憧れ―モマの火星探検記(ネタバレあり)

まきば会の後にモマ2回目行ってまいりました~!ネタバレありでがっつり感想書きます!

観劇の記録

  • タイトル:モマの火星探検記
  • 日時:2017年8月12日 17時~
  • 場所:天王洲銀河劇場

ネタバレありだよ!大阪公演見に行くか迷ってるとか、DVD見るか迷ってるとかいう人は↓のネタバレ無しを読んで!本編はネタバレされないほうがおもしろいから!

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座席位置

観劇史上最高に前だった!*1そして上手!上手に愛されすぎでは…? センブロとか贅沢言わないからたまには下手側チケットも自力で当ててみたい…

こんな席を確保できたの超ハッピーだったのでまきば会が同日開催ってなったときはどっちも手放したくない~~~うわ~~~~って一人で騒いでた。

この位置だととにかく音響がすごいね! ドンドコドンドコ腹の底に響く感じがすごい。OP後の暗転中はほんとに全身びりびりしてた。あと立ち位置によっては役者の声が直に届く。すごい。自分から見て右手にスピーカーがあってそこからも声が聞こえるので「あっち(左側)に立ってるのにこっち(右側)から声がする…」と不思議な感じがして慣れるまでにちょっとかかった。

雑記

ストーリー把握して最初から見ると冒頭からウッッってなる場面オンパレードだった。本当に最初、ユーリがモマに向かって「はじめまして。僕は、お父さんから…」の台詞、初回は「宇宙飛行士の象徴としてのモマ」に語りかけてるんだとなんとなく思ってた。原作(毛利衛さんの本)を読んでたからどこかでユーリとモマは無関係だと思ってたというか…そしたら実際は本当に「お父さんからとても離れた場所」から語り掛けてて、ユーリ…!とそこで早くも涙腺が死ぬかと思った。こらえた。蕎麦屋にはなりたくないのでね!

おじさんの表情もすごく細かくて、ユーリにかつてのモマを重ねてる視線のやさしさが…!ホルストがスコープスの名前の由来を話すシーンで「ジュピターも目をきらきら輝かせてこの話を聞いてくれた」っていうセリフがあるんだけど、おじさんはジュピターくらいのモマを知ってて余計に懐かしいんだろうなぁとしみじみした。

この作品は、全体を通して「父親と子供」のつながりが何度か出てくる。ホルストとジュピター、おじさんとモマ、モマとユーリ、イリーナとその父。それぞれが全然違う関係で、でもどちらかは「すでにいない」存在なのがこの作品のキーポイントな気がする。互いが相手をどう思ってるのかとか、…うーん…うまく言えないんだけど、相手に「伝えたいことがある」ことがそれぞれの人物を動かす力になってるように見えた。

動かす力といえば、「憧れ」もキーワードだ。タケミツのセリフに「すべての生物はあこがれる」というものがある。あこがれるから挑戦し、失敗を重ねたのちに成功し、そうして生き残ってきた。でもそのさらに奥にあるのは、「見てみたい」「伝えたい」という本当に個人的で小さな願い事かもしれない。その本当に小さな願い事が大きな憧れになって、人類を火星まで飛ばしたんだ、と思うとちょっとわくわくする。もとから私は「憧れ」という言葉が好きで、ジュール・ヴェルヌの名言(とされる)「人間が想像できることはすべて実現できる」という言葉も大好きだ。この言葉が冒頭で出てきたあたりでもう虜になるのは決まっていたね。地球から見守る人・宇宙船カムイの乗組員が一丸となって、それぞれの小さな願いを実現していくという熱量がすごく好きだ。

けれどイリーナの立場もすごく理解できる。イリーナの「憧れ」はおそらく「大事な人がそばにいてくれること」であって、モマたちの憧れとはぶつかりあってしまう。両立できない、分かり合えない願いがあって、どっちの言い分もわかるだけに、イリーナの「私の話をしてもいい?」からの「宇宙なんて大っきらい」はものすごく刺さった。このシーン、モマが事故に遭った直後とユーリがイリーナを説得する場面が重ね合わさってて、アイザック・レイ・ユーリの反応がそれぞれで、それぞれの思うところがわかるだけに板挟み…つらい…となってた。つらくない? 誰も悪いことは言ってないんだよ? それぞれがそれぞれの願いやあこがれをかなえるために全力で頑張ってるのに、それがどうしても対立してしまう。あの場面が一番しんどかった。今も思い出すだけでしんどい。イリーナもほんとはモマのこと大事に思ってるんだろうなってのがわかるだけにつらい。だって「待たないから」と言いながらモマの生まれた家を10年以上ずっと維持してるんだよ? ユーリたちの移動距離やモマの「つまり君の住んでる場所からも近くにあるってことだ」から考えると、その家からイリーナとユーリが住んでるところもそう離れていない。極めつけは「ユーリ」という名前だ。ユーリが生まれたとき、モマは火星にいて、その知らせを受け取るのは2週間後になる。それでも迷いなく「ユーリへ。お父さんより」とレコーダに書く。多分出発前に「女の子だったら名前はユーリにしよう」と話してて、イリーナはそれを覚えてて、子供に「ユーリ」と名付けたんだと思う。これが大事にしてなくてなんだっていうんだよ…やばいしんどくなってきた…ヴェラの言う通り、モマは「圧倒的に女心をわかってない」のかもしれない。でもモマはモマなりにイリーナのことを大事にしてるんだろうな…すれ違いしんどい…

憧れだけで何もかもうまくいくわけじゃない、というのが「イリーナ」というキャラクタとその周辺の人間関係に凝縮されていた。でも最後はユーリたちのロケット打ち上げを見に来たから、まだ頑張れば分かり合える余地はあると信じたい。イリーナが父親やモマのことを理解したくてロケットのことを勉強したように、ユーリもちょっとは歩み寄れたら…いいなぁ……。これが保安官の言う「大人になる」ってことなんだろうなぁ。私ももう少し昔だったらイリーナのことを全然理解できなかったと思うので。

(しんどくなってきたので休憩を入れてきました)

スコープスもいい味出してたなぁ…。作品を通して一番好きな台詞がカレイドの「いやですね、目から星が流れます。どうしてそんな機能つけたんでしょうか」なんだけどこの「目から星が流れる」って表現すごくない?! アンドロイドに涙を流す機能を付けた上にそれを「星が流れる」と表現させた技術者にインタビューしに行きたい。しかも涙を流す対象が「モマが置き去りにされたこと」よりも「スコープスがモマのために火星に残ったこと」なあたりが本当にこっちの目から星が流れるわ!!!!! 機能や見た目から考えると多分マイクロ→テレ→カレイドの順で作られてて、カレイドは先2人のことを仲間だと思ってて、2人のように活躍したいと「憧れ」ているところが本当に人間らしくて好きだ。その直前のモマの「行ってらっしゃい!!!!」の笑顔と合わせてここで涙腺が決壊しかける。でもその後スコープスのショートコントで泣き笑いになる。多分スコープスがアンドロイドである理由はこの最後のショートコントにあったんじゃないかなぁ…ネタバレなし感想で「ショートコントは空気を壊す」って書いたけど、ここが一番計算された場所だった。しかもコントのタイトルが「生きる」。モマの反応は「空気の減りが早くなるだろ」。…笑っていいのか泣けばいいのかって感じだ。

台本を見ればわかるんだが、ショートコントは全部「スコープスのショートコント」としか書かれていない。タイトルとか具体的な内容は全部役者(と毛利さん)が考えたわけだ。それで最後の「生きて」が出てきたんだと思うと…アンドロイドなのに…モマがいなくなってからも2人でずっと待ってたのかなぁ…

湿っぽい話おわり!

間近で見る岳ダンスは圧巻でした。すごい。神経が隅々まで通ってるというか、自分の肉体を完全に制圧してる踊り方で本当に目が離せない。しかし彼のダンスはわりと下手側だったので見えないときも多かった。うん! まぁDVD予約したし! あと、カムイでの宇宙船教室のシーンで園児が質問するときにこっちをじっと見てるところがあって、そこの目のきらきらっぷりがすごい。楽しそう。後ろの方でもちょいちょいミヨーたちとしゃべったりスコープスにちょっかい出したりとじっとしてないところがかわいい。自分の国が水没しかかってても心配させないよう明るく振舞ったり、ミヨーとバルトークの関係を気にして写真を撮るよう提案したり、プロポーズ大失敗したモマを励ましたり(励ますというか現実に引き戻す?)、仲間意識が強いんだなって端々から読み取れた。だからこそ、自分が助かってモマが助からないときの「なんで見捨てられるんだよ!おかしいよ!俺は、モマを助けに行く!」の説得力がやばかった*2。タケミツの「共に分かち合おう」のときの顔がね、本当に悲しくて…泣くよな……ここだけは上手でよかった。下手だったら見えなかった。

2回ほど出てくる「祈りを捧げるシーン」も、それぞれの信仰に従ってるなかでガーシュウィンのポーズはすごかった。何がどうすごかったかうまく言えないんだけど、どこか突き放しているように見えるけどどこまでも寄り添っていたいと思えるような……語彙力が足りなくてごめん。あのポーズのブロマイドかなんかがあればいいのに。他の人はなんとなく「これがベースだろうな」っていう心当たりがあるなかでガーシュウィンだけ独特だったからかもしれない。がっくんは目を開く瞬間が一番美しいように思う*3。目を閉じている間はずっと何かを一心に願い続けて、開いた瞬間には次に向けて何事かを決意しているような表情だった。

カテコでは鈴木勝吾さんのほぼゼロ位置だったんで、勝吾さんが無表情のまま客席をじーーーーーーっと眺めている様子をじっと見てた。役者からこちらはどう見えてるんだろう。スタオベしたけど、こちらの感情が少しでも伝わっていればいいなぁ。

終わってからも、最後の星空照明がめっちゃ綺麗で、客席に残ってアンケート書きながらずっと見ていたいなぁ…としみじみしてしまった。上から見たときと間近で見たときで、星空の印象が全然違う。上からだと吊ってる線が見えるので「照明綺麗だなー」だけど、間近だとまじで満天の星空!って感じで離れがたさがすごかった。初回はこの星空が見えて、モマが「はじめまして」って言ったところで涙腺が決壊したし。

アンケートも出して劇場を出て、りんかい線を待ちながらふと思ったんだけど、モマのICレコーダはどうしてあの家にあったんだろう。希望に過ぎないけれど、あきらめきれなかったレイと、先輩を追いかけるカレイドの2人が火星に行って、カレイドが先輩から受け取って地球に持ち帰り、イリーナに渡っていたらいいなぁ…。イリーナにもモマの声が聞こえていたらいいなぁ。

最後に一言

多分モマを演じたのがマッド・デイモンだったらエンディング変わってたと思う。オデッセイ的な意味で。

*1:刀ステ再演リリイベ(最前列)はイベントだからノーカン

*2:この構図、薄ミュで見たな…とまきば会の影響もあり連想した

*3:松田岳という役者に興味を持ったのが薄ミュ奇譚DVDのラスト、ドアップの納刀シーンだったからかもしれない