行く末トーキー

はじめからはじめよ

遠くて近い ― 舞台「あいつが上手で僕が下手で 人生芸夢編」

聞いてくれ青山のファーマーズマーケットで梨が5個400円だった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!最高かよ!!!!!!!!!!!!!!

鑑賞の記録

  • タイトル: 舞台「あいつが上手で僕が下手で 人生芸夢編」
  • 日時:2024/11/16 18時
  • 場所:日本青年館

こいつまた買ってんなって思ったでしょ。私もそう思う。でも5個400円は買わずにはいられないでしょ……近所のスーパーなら今1個買えるかどうかの値段だぜこれ。食べるの楽しみ~

昼公演ではセットが壊れて中断するトラブルがあったみたいだけど、夜は島パパの声がガッサガサだった以外は特に問題なかったです。すごいガッサガサだったけど大丈夫かな。冒頭のシーンで島にも時浦にも突っ込まれてた。

いやーーーーー面白かった! めっちゃ引き込まれたし笑ったし、いい作品見たな~って帰り道が楽しかった。背負った梨の重さも気にならない楽しさだった。

ずっと「コンビ」という他人でありながら身内以上に近しい関係を扱ってきた話が、満を持して肉親というか父と息子っていう関係をど真ん中に据えてきた。こういう、これまでの積み重ねがあるからこそ描ける題材がものすごく好きで。演じる側も見る側も同じ土台を共有できている感じが好き。シリーズ物ならではの強みを活かしたいい作品だった。

時浦は相変わらずこじらせてるしメンヘラが加速してるし面倒くさいんだけど、その面倒くささが今回のカギでもあったよね。母子家庭出身なことは確かかなり初期から明かされてて、でも本人はそこまで気にしてない風だったのに、今回やたら突っかかってくるな~とは思ってたんだよ。島パパが現れたことで「自分が得られなかったもの」をまざまざと突きつけられたからかなーと思ってて、そしたらまさかの親父殿登場。話が上手い。たかすなはうるさい。あいつめっちゃうるさい。そこが好き。

あのさ~~~~2人で話す時の「チキンラーメン食べたかった!!!!!!!!」ってまくしたてるところ、話としても好きだし、荒牧さんの芝居としても好きだし、なんか見てて惚れ惚れしてしまった。吐き出した言葉全部に重さが乗っている感じ。相手との距離はあるんだけど、言葉で、声で殴りつける感じ。めっちゃ良かったなぁ……。普段が軽いとかじゃなくて、明確に「ぶつけてやる」という意図が分かる感じが好き。

何かあるとすぐ拗ねて僻んでばかりだった時浦が自分の本心を隠さず口にしたっていう重さと、それを島が促したっていう組み合わせがもう本当に最高。互いが互いに甘えてるんだよね。表向きはつんけんぶつかってばかりだけど根っこはべったりくっついててもう離れようがない感じがとても好みです。

ラストワルツはもともと個が強くて、だからこそ高砂の強引さに岬が救われる。ロングリードはくっついていた部分を引っぺがしたから立ち位置を入れ替えられた。そう考えると、エクソダスは自分たちが離れられないことを認めたのが今回の肝だったのかなーって。

同じコンビでもこれだけ違う在り方を描けるってすごいなー。1個舞台見てないけどそれも見ればよかった。パンフのあらすじ見たらめっちゃ面白そうじゃん……現多さん好きなんだよな~。配信やるんだっけ。調べてみよう。

あと、時浦が湘南劇場の再建を掲げたのもメタ視点で嬉しかったな。初期のインタビューで、荒牧さんが「設定を引き継げばいろんな人が(芸人役で)出られる」みたいなことを言ってて。舞台を主戦場とする役者が活躍できる場を増やしたいって意図を知っていたからこそ、湘南劇場がなくなる展開は地味にショックだった。結局はハコじゃなくてヒトなのかよ~、みたいな。荒牧さん目当てで動いてる私が言えたことじゃないんだけどさ。でも、今回で再び「湘南劇場」というハコが戻ってきそうな気配を作ってくれて素直に嬉しいと思った。時浦の夢でもあり、荒牧さんの夢でもあるだろうからね。

ライブシーンは荒牧さんの踊り方がちょっと変わったように感じた。ふわっとした……?ような……? ダンスを語る言葉を持ってないからうまく言えない。でもなんか重心が上に来てない? もうちょっとどっしり構えるタイプだった気がする。そりゃまあこれだけ時間が経てば踊り方だって変わるか。人っていつでもいくらでも変われるんだなぁ。時浦も32歳になるし。等身大な感じが好き。

は~~~いい作品だった。しばらく反芻しよう。今回も漫才はネタ2個あるんだろうか。芝居だけじゃなくて漫才も楽しめるなんてやっぱりお得な作品だ。