行く末トーキー

はじめからはじめよ

殉愛 ― 舞台 刀剣乱舞 禺伝 矛盾源氏物語

現場は不要不急ではないので!

鑑賞の記録

やっっっっっっと見に行けたよ~~。初日組の評判見て早く行きたい増やしたいと思いつつここ以外に予定が空けられず、チケットも水道橋のローソンで発券する始末。しかし唇を噛みながらふせったーにいいねし続ける生活とはこれでおさらばだ!

雑感

めっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっちゃ面白いな?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!

思えば、何をやるか分からない作品が久しぶりだし*1、ましてや「全員女性が演じる刀ステ」なんて予想するだけ無駄と言いますか。綺伝後の解禁でウエェェェーーー?!ってひっくり返りはしたけどもそれ以降はもろもろ忙しくて経緯もほとんど追えてなくて。結果として前情報をほぼ入れずにTDCに座った。男性客をちらほら見かけたのが新鮮だった。

いや本当に面白かった。何よりこの作品が「刀ステ」シリーズの一員であることに感動した。なんならOPで巻物がバサッと落ちて十二単を着た方々が見えた瞬間に感極まった。よく分からないポイントで感極まりまくったので休憩でちょっとバテてた。ノーガードで突っ込んじゃいけないって分かってたけどガードにかける時間がなかった。二重構造に気付く頃には疲れのあまりカタルシスを感じる余裕がなかったことが残念。もう2回くらい見て補いたいがこればかりは時期が悪かった……お互いに……配信買おう……。

「名も無き男」が源氏物語に、そして作者の紫式部へ向ける敬愛が現実の一番底にあって、第一層(源氏供養モチーフ)には彰子様や小少将の君(+他の女房仲間)と紫式部との友愛や尊敬、第二層(源氏物語)には光る君を中心とした愛憎が渦巻いている。そしてこのもつれた物語を正すために来た刀剣男士たちも愛によって語り継がれ付喪神となり、審神者の力でヒトの形を得た存在。さらに一番外側、私達観客と制作陣が源氏物語刀剣乱舞に寄せる愛情も間違いなく織り込まれている。どこを切り取っても愛しかない。けれど誰もが少しずつズレているというか、完全な意味での一対一、相思相愛はどこにも見当たらない悲しい物語でもあった。誰もが自分の思う愛に殉じていく物語だった。愛、難しい。

このさ~~~~「名も無き男」さ~~~~~~~~~~!!! やってることは全編通してはちゃめちゃで支離滅裂なんだけど動機だけはまったく正しいというか、分かってしまうところがしんどい。あるがままの源氏物語を愛して、それを生み出してくれた作者の行く末を心配して、その心を時間遡行軍に利用される男。いやもうさ~~~~~あるじゃん……この話を書いてくれた人が3食うまいもの食べられますように的なさ~~~~~!!!! 仕事の愚痴とか見かけると自分とは関係ないのにイラッとするし代わりに成敗したくなるあの感じ。そりゃ「嘘をついた紫式部は死後地獄に落ちます」って言われたら発狂したくもなる。まだ仏教的な価値観が優位というか、極楽や地獄といった概念が身近だった時代ならではの描き方だよね。今だったら「 あの神作家が地獄とかありえないし、物語と嘘はまた別のものでしょ。てかそもそも地獄とか……w」って一蹴できるだろう物言いも本気で信じてしまう社会。そう思うと男の行動を一概にも責めきれない。地獄行きはともかく、二次創作だから訴えられたら終わりです的な文句つけられたら私もちょっと考えてしまうもん。

源氏物語、どうして紫式部はこういう話にしたんだろうと改めて疑問に思った。漢籍に親しむも「女だてらに」と疎まれてきた彼女が、なぜ当時の価値観に沿った話を作ったんだろう。女が研究者になってもおかしくない世界を選ばなかった理由が気になった。そりゃまぁウケ狙いみたいな身も蓋もない理由もあるとは思うが、彼女が歌に収めきれなかった感情をもっと知りたくなった。高校の頃に寂聴訳で一通り読んだきりだし別の訳にも手を出してみようかしら。

キャスト全員が女性であることにも意味がある(と感じた)し、いつもの刀ステ本丸との繋がりも描かれたし、これが「刀ステ」シリーズの一員として生まれた現実そのものが嬉しくてたまらない。まんばちゃんの太陽スケールがいつの間にかバカデカくなってるのには笑ったが。あいつ何? 刀剣乱舞の世界そのものをぶっ壊す機構になろうとしてるの?

私も虚伝再演からのファンだし、それこそ初演の頃はこっそり嫌がってたからあまり偉そうなことは言えないんだけども。でも、末満さんが考えた話をキャストとスタッフが全力で作り上げて、刀ステというブランドは確かなものになった。ステ以外のメディア展開も含め、ゲームが出た当初に比べればはるかに世界が広がったよね。その輪郭をさらに広げる力が禺伝にはあった。これを面白いと感じられる自分でよかったと思う。時に悲しみ時に苦しみ時に恨み時に血の色を疑いながら刀ステを見続けてきてよかったなぁ。

自分の見てきた作品とリンクする部分がたくさんあるのも嬉しかった。本編/行間/雲隠はまさしくTDCのジョ伝であった序/如/助だったり、かつて一度だけ見た宝塚作品に出てた方*2が、今度は慣れ親しんだ刀ステ世界に出ていたり。そういえばジョも宝塚もえらい寒くて天気が悪くて足元ぐっちゃぐちゃだったな……w そんなところは一緒じゃなくていいんだけどな。

は~ほんとによかった。ようやくふせったーのURLを踏めるのも合わせてよかった。でも一旦寝ます。

そういえば、劇中の布が舞台端の照明スタンド?に引っかかって回収できず、舞台袖から無理に引っ張るからガッタンガッタン揺れてたのはさすがに肝が冷えた。遠目で見てもかなりのハラハラ案件だったからあのあたりの最前にいた人は気が気じゃなかったと思う。最終的に黒子が出てきて手作業でほどいてた(その間も芝居は続いた)がそれやるなら最初からやってほしい。怖かった~。倒れなくてよかった。

*1:舞台作品で限ると去年11月のカミシモ2以来?

*2:彩凪翔さん / ひかりふる路・SUPER VOYAGER! / 当時の感想