行く末トーキー

はじめからはじめよ

一瞬の幻灯 ― BSP新選組 完結編

今日はちゃんと意識して買っておいたチケットだぜ!!!!

観劇の記録

座席位置

前方のちょっと上手。前回は下手だったのでちょうど見えないところを補い合った感じがする。

雑感

どの舞台でも前の方の席だと特別な感じがするんだけど、BSPの舞台はとりわけ特別に感じる。あうるすぽっとという劇場の特徴なのかもしれない。なんか、「近い」というよりは「生々しい」と感じることが多い...のかな。すぐそこに「在る」っていう熱のようなものを感じられるから、前の方の席が当たると少しうれしくなる。BSPだからそうなのか、あうるすぽっとだからそうなのかはちょっとわかんないけどね。

初見時はとにかく押し流されるままに翻弄されてしまった。今回は流れを知っているからそこまで暴力的な感想にはならないけど、それでもやっぱり「呆気ない」の一言に収まってしまう。2度目でこれってことは、渦中の人たちは本当に息つく暇もなかったんだろうなぁ。この「時だけが無情に流れた」っていう感覚を持って暁(特に芹沢鴨の後悔)を考え直してみると、彼の後悔の重たさがさらに増すように思う。時間をかけてじわじわと締め上げられるような痛みだと思ってたけど、どちらかというと本当に焼かれるような痛みだったのかもしれない、みたいな。

第5話 志士たちの悪夢

冒頭で甲子太郎が殺されたときに「これが後に悪夢の引き金となることは知る由もなかった」的な台詞なかったっけ...? 前回の感想もそれを受けてのことだったんだけど今回はなかった...ような...。どうだったっけ?

この話はとにかく伏線伏線そのまた伏線!って感じで、シーンごとの密度が高い。甲子太郎を中心に据えて、誰がどう動いたかをちゃんと追いながら見ていると全く無駄な言動がなくてびっくりする...。ぱっと見ではいきなりに見える行動も、その前にちゃんと動機が出てくるというか...。前回は甲子太郎が「近江屋に滞在中である」って言った理由がわからんかったけど、あれは中岡に断られたことの腹いせ...だよね?

あと近藤さんが刀を抜く理由が総司を守るため、っていうのが近藤さんらしくて好き。一貫して「刀を抜くな」「収めよ」って命令してる近藤さんが、総司が危なくなったら迷わず刀を抜くところがいい。他の隊士たちとは違って「何のために自分が強くなったか」がブレてないのがわかるので好きなシーンです。まぁその後進む方向はどうなの?って思わなくもないが...。

そういえば釣り竿を投げてしまう慶喜公はこっちでした。なんかコミカルさが増してた。すーーーーごいうろ覚えなんだが、確か別のBSP作品でも釣りをする慶喜公いなかったっけ? 龍の羅針盤だったかな。そのときはちゃんと持ち手を「離さない!」してた気がする。釣りの逸話でもあるのかなぁ。

龍馬はもう完璧に龍馬なので言うことなしです。こういう役者さんのことを「華がある」って言うんだろうなぁ。誰が相手でも「この人についていけばきっと大丈夫」って思わせるカリスマを演じるのがうまいよなぁ。それでいて断られても受け入れる器の大きさ! 「いたしま....せん?」からの「またな」までが本当にすごい。実際の坂本龍馬もこんな感じだったんだろうなって思える。

第6話 志士たちの面影

良順先生と芹沢鴨の両方を田渕さんが演じてることになんかヴッてなった。良順先生も「絶望も悲嘆もたくさん見てきた。頭から消そうとしてもできない」みたいなことを言ってて、そこは芹沢鴨と変わらない。先生は「開き直って向き合い続けることにした」らしい。芹沢鴨も開き直ったことは多分同じだけど、開き直り方は先生の真逆だったんじゃないかなぁ。2人とも、というかこの話に出てきた全員がそれぞれの絶望を抱えていて、それとどう戦うかを描いた作品なのかもしれないなぁ、と新たな一面を見つけたような気がした。5話の山南さんもそんなことを言ってたし。

...最初は「武士になる」っていう憧れのために戦ってたのに、いつの間にそんなことになったんだ......? 自分で気づいておきながら自分でぞっとした。彼らは武士という希望を抱いて京に来たはずなのに。どっちかが勘違いだといいんだけれども...。

少しずつ少しずついろんな人がいなくなっていくのは、堅く組んだ紐が解けていくようで見てて切なくなる。一気に断ち切られるんじゃなくて、じわじわと崩れていく様子を見ていることしかできないのが歯がゆい。総司の体調がそのまま新選組の強さを表しているように見えてしまう。全員がそれぞれなりに最善を尽くしているのにどうしてこうなっちゃったんだろう。

前回は気づかなかったんだけど、作中で誰かが亡くなるたび、黒猫が灯を持ち去っていっていた。黒猫は「あかり」でもあるから、そこのダブルミーニングが憎らしくもなる。あの灯は命そのものだったんだなぁ。最終的には下手の1番手前の1つだけ残って、後は全部なくなってしまう。上手の1番手前が原田左之助だったことを考えると、あの灯は永倉新八のもの...だと思う。作中でもペア扱いされてたし、実際に生き残っている姿を描写されてるし。史実と照らし合わせると、あの中では永倉新八斎藤一・立川主税の3名が生き残っているから、本当なら灯は3つ残っていてほしかった。でもたった一つに集約されたことで、もしかしたらあの灯は斎藤の、立川の、土方が守ったかもしれない誰かの、そして永倉が折に触れて書き残しておいた彼ら全員の灯かもしれない、って想像できる余地もできたように思う。

最後の最後に立川が和泉守兼定を差して出てくるところで、いつも未来を感じる。ほとんど全員がいなくなってしまったけれど、たった1つの灯が残ればそれが未来に伝わっていくのかもしれないね。

彼らの一生なんて本当に「一瞬の幻」だったんだろう。それでも、誰かが残し、伝え続けてきた灯があるから、こうして彼らがどう生きてどう死んでいったかがわかるようになってるんだなぁ。なんか、時の流れを感じずにはいられなかった。