行く末トーキー

はじめからはじめよ

影 ― 舞台「炎の蜃気楼昭和編 散華行ブルース」

夏だ! お盆だ! 怨霊だ!

観劇の記録

  • タイトル:舞台「炎の蜃気楼昭和編 散華行ブルース」
  • 日時:2018年8月11日 19時 (初日)
  • 場所:全労済ホール/スペース・ゼロ

あまり関係ないこと

ミラステが、始まってしまった......。

映像で見て推しさんが気になる切っ掛けになり、去年初めて劇場で見て奇行を繰り広げ自滅していった*1あの作品が始まりました。

今年は去年の二の舞を踏まないようにいろいろ対策は立ててある。1週間かけて昭和編を読み返し、舞台の映像を見直し、小冊子を眺め、順調に精神を病んでから劇場に赴いた。突発的に病むといろいろ自滅しやすいらしいから。臨戦態勢という言葉がしっくりくるくらいには、なんか身構えている。

なんでこの作品にここまで惹かれるのか、自分でもわからないんだよね。推しが出てるわけでもなし、以前からの原作ファンだったわけでもなし。でもなぜかこの作品は「見なきゃ」という感情が先走る。精神が抉られることもわかっていてなお「見たい」という気持ちが消せない。なんなんだろうね。マゾヒスティックな趣味はないはずなんだけれども。

「始まってしまった」、って書いたけれど、これ以上の感想が出てこない。ここから何がどう転がっていくのか、見たいような、見たくないような、そんな気分だ。

座席位置とか

後方の上手。劇場っぽくない椅子だ~と思いながら座ってたら、隣に友人が来て死ぬほどびびった。予期せぬ連番だった...。確かにチケットを買ったタイミングはほぼ同時だったけれど、まさか隣同士とは思わなかった。こういうことってあるんだね...。

雑感

やっぱり引きずられた...。見てよかったとか、見なきゃよかったとか、そういう言葉以前に、見なかったことにしたいというか、なんというか......。言葉にするのがもったいない...?というのが近いのかな。こうして言葉を残さないと前に進めないことは重々承知なのだけれど、言葉にすることで溢れるものが多すぎて、もったいない。

多少の変更はあるけれど、基本は原作に忠実だ。幹となる部分はすでに知っているはずなのに、どうしてこうも心惹かれるんだろう。やはり人の形というものは、自分の想像を越えた外にあるから、どうしても見たくなるんだろうか。わからない。

人の心を想像するということは、どこをどう突き詰めても答えのない、最終的には堂々巡りに陥るようなものだと思っている。自分が知らないものは想像するしかなく、しかし知らない以上答えには辿り着けない。それでも「わかりたい」という一心で、近づいたり、遠ざかったりしながら、少しずつ進んでいくような、気の遠くなる行動だ。普通は、近づいたり遠ざかったりしながら、いずれ死を迎え、どこか1点に収束する。けれど彼らは、400年ずっと、肉体や環境を変えながら、近づいたり遠ざかったりを繰り返している。

どうしてそこまでしなきゃいけないんだろう。ただ1回の初生で背負った罪は、ここまでして償わければならないんだろうか。

終わりというものは、想像すると冷えるような恐ろしさを覚えるけれど、同時に、この上なく穏やかな気持ちにもなる。終わるということは、ある意味で「もうこれ以上の苦痛を感じなくて良い」という許しの境地でもある。けれど彼らにはそれがない。どうしてそこまでしなきゃいけないんだろう。わからない。

今回の作品は、非常に暗かった。話の内容も暗いし、物理的に暗いなと思った。だから、稀に出てくる強い光が作る影が怖かった。実体よりも大きく映る影が恐ろしいと思った。

きついなぁ。

最後、景虎が進む「光差す方向」で、舞台奥と同時に客席が照らされたこととか、普段はOPで写していた時代を表す写真が、最終的に現代の新宿周辺?のビル街になったこととかで、確かにこの話は「今」に繋がっていくんだという事実を感じたことをなんとなく覚えている。昭和30年代というのは、私にとっては教科書の中の時代だ。それが確かに「今」と地続きである、ということを受け止めあぐねている。

初日おもしろポイント

初日だからなのかなんなのか、結構「oh」となった部分があった。まぁそれも込みで初日だ、と割り切っているからいいのだけれど。

今回のセットは紅蓮坂とほぼ同じ(2階部分が若干違う?)で、上下に階段とドアがあって、ドアが開くと別のセットが見える、という仕組み。この下手側ドアが...途中で......ゆるふわになってしまって......w 最初スゥ、と開いたときはそういう仕掛けなのかな?と思った(色部さんがすっと閉じた)けれど、直江が倒れたついでにそっと閉じたのを見て、これ事故だwwwってなった。カーテンコールでもふわっと開く→殺陣衆が閉じる、を繰り返してて見るたびに笑ってしまったw 次回には直ってるといいんだけれど...w

あと冒頭の月山で吸力結界に踏み込んだ長秀・景虎が脱出するところ、まあささんが拳銃取り落としてしまって...oh...。ここ原作でも好きなところだから、次からはバシッときまるといいなぁ。

スタオベを見た翔さんが「みんなそんなにお尻痛かった?」って訊いたのも好き。このバランス感覚、どこをどう生きれば身につけられるんだろう...。冗談でも言っていないと立っていられない、って言ってたけれど、あの言葉で現実に立ち返って来れたので助かりました(最初力が入らなくて立てなかった人より)。

始まってしまったのものは、終わるまで走り続けるしかない。この作品もそうだし、人生もそんなもんだ。今回はどこまで抉れるか自分でも少し楽しみにしている。

*1:過去記事参照