行く末トーキー

はじめからはじめよ

当たり前のクズばかり ― 新・幕末純情伝 FAKE NEWS

当券乱舞、開始だ。...それで、どうするんだ?

すみません、ふざけました。

観劇の記録

※ 文中の「今日」は「7月20日」のことです。

よしなしごと

昼間は刀ステを見て、そのまま挑戦した刀ステの当日券はご用意されず、なんとなく新宿まで歩いた。ちなみに青年館から新宿(南口)までは徒歩で50分かからない程度です。道も1回曲がってあとはまっすぐ道なりに行けばOK。

刀ステのことを考えながらぽてぽてと歩いている最中に、そういえば純情伝やってた気がするなぁ、と思い出した。

10年ほど前に、ちょっと理由があってつか作品の戯曲を読み込んだことがある。台詞が長いし、言葉がよどみなくすらすらと並んでいる。戯曲を読んだだけだったし、その頃は演劇ともあまり縁がなかったから、これを人間が言うのか~すごいなぁ、と思った。思っただけで、その後何をするわけでもなかった。...それで10年の時が過ぎ、何の因果か演劇を見ることが趣味になってから、そういえば「つかこうへい」の戯曲を読んだことがあったなぁ、と思い出した。だから、いつかは「熱海」や「郵便屋さん」、そして「純情伝」を見に行きたいなぁ、と思っていた。

そんなことを思い出して、今日当日券あったら見ようかな~とふらりと立ち寄ったら、ちょうど発売開始時間(18時)だったので、これもなにかの縁と飛び込んだ。

ページがめくれないなら、記憶が整理できないなら、無理矢理にでも前に押し出すしかないんだよね。

座席位置

後方のドセン。適当に「当日券ありますか~」って訊いたら座席選ぶタイプのあれこれだったからちょっとびっくりした。

雑感

やっぱりこれすげぇ脚本だわ...。読んだのが10年くらい前の1回きりだから大筋は覚えていないけれど、あの時感じた言葉遣いの巧みさとか、勢いに押し流される感じがそのまま舞台上にあった。あの圧倒的な台詞の量...! 圧縮率がどちゃくそ高い。うかうかしてたら置いていかれそうになる勢いと、史実上の幕末の慌ただしさと、なんだかよくわからないネタ(日替わり含む)がごちゃまぜになって、でもそれが不思議と心地よかった。金曜だけど土用の丑の日だからうなぎもらってきた!と、お風呂の温度は42度です!俺は43度!だから髪が変なんだよ!うるせぇ!と、僕カツえもんが好きです(何も伝わらない)。

味方さんはいつ見ても「味方ワールド」を展開してて、なんだかよくわからんけど多分この人が言うならいけるっしょ!大丈夫だろ!って思わされてしまう。あと汗がすごい。一人だけテカテカしまくってる。総司にも「汗すごい...」って言われてた...w お見送りにも味方さんがいて、Tシャツに着替えたはずなのに汗がだばだば吹き出してて代謝の良さに感動しました。いやあれはもう一種の芸術か何かだと思う。一人だけサウナに生きてる。

汗はさておき内容の話に戻ろう。

出てくる人みんなが清々しいくらいにクズでむしろスッキリした。ある程度クズっぷりが強調されてはいるんだけれど、誰もが「自分が助かりたい」とか「自分も未来が見たい」とか「未来で~~したい」って思ってて、それが叶わなさそうだ、となるとあがいてしまうんだよね。新選組は、美化?された物語が多い中で、ここまでどうしようもないクズ集団として描かれてるのが、むしろ愛着が湧いてしまう。こっちのが身近というか、うんうんわかる~...ってなってしまう。うつされたくないからって言ってたけれど、それでも総司のことをそれなりには大事に思ってたのかなぁ...。少なくとも土方は、キスはできなかったけれど、自分のことが優先だったけれど、それでも他のみんなよりは大事に思ってた、はず。誰だって自分が大事だもんなぁ。

そんな当たり前のクズばかりの世界で、土佐の龍こと坂本龍馬だけはとにかく他者のために動き回っていた。確かに総司に対する言動はモテない男のそれだったし下ネタはめちゃくちゃ激しかったし*1いろいろヤバい人だったけれど、人を思う気持ちと、他人のために動く気概は誰よりも強かった。それが最後、ここまでやったんだから勲章がほしい、褒められたい、とこぼしながらも、総司には甘えられないまま死んでいった...のがすごく切なかった...。あのシーンの総司の台詞(切り損なうからすかさず胸に手をつっこめ、そしたらアハンアハン言ってやるから~)はなんとなく覚えてて、けれどそれがあそこまで切ないシーンだとは思わなかったので、うっかりちょっと泣いた。たまに自分でもよくわからないところで泣くから困る。

いい話かと訊かれたら全然そんなことないし、クズばっかりだし、でもどうしようもなく愛着が湧くいい作品でした。思い切って見てよかった~!

*1:結局なんでブラしてたんだっけ