行く末トーキー

はじめからはじめよ

5×10の戦場 ― BSP「新選組」暁ノ章・宵ノ章

BSP「新選組」、東京公演お疲れ様でした!

観劇の記録

  • タイトル:BSP「新選組」暁ノ章・宵ノ章
  • 日時:2017年12月23日
    • 暁ノ章:11時
    • 宵ノ章:16時
  • 場所:あうるすぽっと

実は初めてのマチソワでした。トークイベントはノーカン。まぁこの作品も全く同じかと言われるとそうでもないから微妙なところかなぁ。

イベントやライビュはあるけれど、今年の観劇納めはこの作品でした。これで良かったなーーーーーー!

今日のサブタイトル

観劇の記録のサブタイトルは、いつも見たものの一番印象に残った台詞とか、一言で言うならこうかな、という言葉を入れている。今日のサブタイトルはここから。

5×10しかないとか嘘やん...と思って見る前に確認したけど確かに5×10だった。思った以上に狭い!!!!!! でもその空間が無限に広がっているように思えるからすごい...。なんなんだろうあの不思議な空間...?

座席位置とか

  • 暁ノ章

前方のドセン。すごいドセン。やばい。半端ない(後述)。個人的に一番の神席だと思う。

  • 宵ノ章

中ほどよりちょっと前、ちょっと下手寄り。珍しく自力で下手側を当てたのでちょっと気分が良い。

雑感

4つまとめて行くぞ!

近藤勇の大志

2幕頭でがっくんがアクティングエリアに出る前に頭を下げる、という事象に気づいたから、もしかして1幕頭でも何かしてるんじゃないか...? と思って開始3分前から下手後方のドアを凝視してた。近くの方ごめんなさい...どうしても気になったから...。どうだったかと言うと、客席に踏み出す前に深く頭を下げてました。仮説が当たった。まだ気づいていない人もいてちょっとざわざわしてる中、静かに下りてくるところが美しかったです...。視線がぶれないところが素敵です。凝視してた甲斐ありました...。そして土方章でも同じことをする。(予告)

近藤章は、4つの中で一番安心して見られるというか、落ち着いて見られる感じがする。演技がどうというよりは、話の雰囲気が常に明るいからかな? 素振りエクササイズしてるし。でもこの章がないと、他の章が成り立たない...というか、誰もがみんな夢や憧れを持ってたんだって実感してるのとしてないのとではその後の見え方が全然違うなぁと。宵から見始めたから余計にそう思う。人を斬るために刀を振るいたいのではない、という台詞を知ってるとその後のしんどさが倍以上になって襲ってくる...。人を守るための刀だったはずなんだよなぁ...。近藤さんは、新選組のみんなは賭けに勝ったんだろうか、それとも負けたんだろうか。

OPダンスで鐘ヶ江さんが夜獣覚醒の歌詞を口ずさんでたのがやけに記憶に残ってる。全部ではなかった(気づいたのはサビ前~サビの一部)けど、誰もしていなかったことだから? というかドセンだったからかもしれない。ドセンやばい。距離も結構近いし、されど最前列ではないので目線の高さがだいたい同じなんだよ...すげぇ...。名乗りの後、最初にがっくんが出てくるところ(紅ヒ月ノ夜~)の構図完璧すぎる。視線ががっくんに釘付けになる。そもそもの話、ここの振りが好きなんだよ...視線がぎょろっと左に寄るところとか初見から惚れてた。視線の吸引力が高すぎる。抗えない。すごい。それをドセンで見ちゃったからもう...もう...!(顔を覆う) 「見た」というより「見ちゃった」だよ...はぁ~~~~~~~~~ほんとかっこよい~~~~~~~~~~! 最後の構図も完璧。正面から見ると新選組の面々の向こうにがっくんの腕だけが見える。対立してる~~~~~ラスボス~~~~~!って思いながら見てた。語彙はどっか消えた。

さんま争奪戦もなんか過激化してた。平助がさんまで火を熾そうとしてたのと、あのぶっとい木刀が持ち出されたことはわかる。このシーン手前と奥のどっちも見たい...手前は大事なシーンだけど、奥で起きてるさんま争奪戦から目が離せないんだよ!火を熾そうとするな!

浪士募集の張り紙?を見てるときの近藤さんの表情がね...。迷ったら動く、困ったら動く、が信条だけれど、賭けに出るのは苦手な人なのかな。試衛館のみんなの人生を背負ってるから踏み出せない...のかもしれない。生きている仲間の人生を背負うのは、斬った相手の無念を背負うのとはまた違った重さだ。最初から背負ってたから、近藤さんは人を斬ったとしても揺らがなかったのかな。強い人だ...。

今「迷ったら動く、困ったら動く」の順序を確かめるためにパンフ見たらたけるくんが顔全然違ってびびった...。稽古開始から?公演開始までの1ヶ月足らずで10センチ背が伸びたって言ってたし成長期怖い...。別人じゃん...。大阪公演まで1ヶ月くらいあるし、また10センチくらい背が伸びてそう(トークイベントで田渕さんが言ってた)。

石田にゃんこかわいかったです。なおやくんって愛嬌があるよね...。見てると癒される。かわいいかわいい。石田にゃんこと戯れる沖田さんもかわいい。猫~~~~~~!...見てる最中とか休憩中はあれ書こうこれ書こうって思ったはずなんだがマチソワ一発目だからだいぶ忘れてしまった...。メモとっとけばよかった。

芹沢鴨の後悔

これはね~~~~~~~~~大塚さんの一言で見え方ががらっと変わった。

この写真めっちゃ好き...というのは置いといて。

「後悔は生きた証」って...凄まじい言葉だ...。てことは、言い換えれば「芹沢鴨の生きた証」ってことじゃん。どの話もみんなが生きていた話なんだけれど、鴨りん*1だけは作中で死んでしまう。鴨りんの話はここで完結するから、余計に「生きた証」という言葉が刺さる。

運命に逆らったことで人の道を踏み外し、地獄を見てきた男が本当に殺されるまでの話。なぜ生きるのか、なぜ刀を振るうのかという問いかけが一番重たかった。なぜ今も生きていなければならないのか...?と自問自答しながら生きていたのだとしたら、宿場町での「この世は煉獄」という言葉にもうなずける。一方で、悪の華、散りてでは「懐かしい煉獄」と歌っている。彼にとって「生きる」ってなんだったんだろう。心が朽ち果てた後も体が息をしていて、その体を活かすために何をしたんだろうか...。

この章は、新選組にとって大きな分岐点となった「芹沢鴨の暗殺」を描いているけれど、新選組の面々は彼のことをあまり知らなかったんじゃないかと思った。知らないまま終わってしまった。彼自身も知ってほしいとは思っていなかった...のかな。わからない。何も残したくなかったのかもしれない。彼が生きた証はあまり残されていない。全部全部まるっと抱えて消えてしまったんだとしたら、なんかひどく悲しくなる。

それを後押しする?というか、補強するのが表情なんだよなぁ...。一人でいる・回想シーンでは悲しそうな顔をしているけれど、新選組の隊士を前にしている時はにやにや笑っている。その中間のときの顔がなんとも言えなくて...。「貼り付いたような笑顔」ってこういうことなんだなって初めて知った気がする。彼の生きた証はどこに行ってしまったんだろう…?

そんな感じで、根底にある話はめちゃくちゃ重たいのに、ちょくちょくギャグシーンが挟まるのでさほどずしっとこないのがこの話の面白さだと思う。田渕さんだからこそってことなのかな。

お団子食べるところはなかなかにえげつなかった。お団子そのものは2つ(2串)になってたから、手加減したんだなと思ったら、なんと懐から大福が...!これはひどい。爆笑した。そして相変わらず原田(新井さん)が近い。食べきったまーくんさんすごいです。あれはけてから呑み込んでるのかな...?難しくない?むせたり詰まったりしてない? てんまくんが後ろ向いて爆笑した後、フン!って感じで気合い入れ直して真顔で振り向いたのも結構腹筋に来た。1回失敗して後ろ向き直っちゃったしね。

あと何かのタイミング(忘れた)で原田が「鴨りん」を連呼するし、真面目なシーンなのに斎藤が「鴨りんは長州...(フン!)芹沢は長州...」って言うし。確か長州との繋がりが云々の話だったはず。このときのみんなの「へ???」っていうリアクションもかわいかった。

そうだそうだ、稔麿の羽織姿も最高にかっこよかった。着流しのままでもかっこいいけど、羽織と番傘が追加されるとかっこよさが格段に上がる。すごい。そしてそのまま以蔵の背に足をかける。かっこよさの暴力。おみ足が眩しいです松田さん。ここの劇場写真出たら買い占める自信がある...。布教したいような独占したいような。ドセンで真正面から見ちゃったから心に重大なダメージを受けた。あそこまで振り切るともはやため息しか出ない...。すごかった...。はぁ...。この構図だけでチケ代の元とれますありがとうございます。思い出すだけでニヤニヤできる。

この二面性が芹沢章の面白いところだよなぁ。後悔って言うから重たい話かと思いきやっていうところが好き。

この話は時系列的に土方章とかぶるところが多くて、口パクや身振りで土方章のあれこれが盛り込まれてるのにようやく気づいた。芹沢を斬った後の口パクは「せりざわ」ではなく「わたしは」だったかもしれない。これについては土方章で!

土方歳三の憂鬱

やはり開始3分前から下手後方の入り口をガン見してた。千秋楽ともなれば一度以上見た人が多くなってきて、静かになるタイミングが早まってたけどそれでもこの演出が好きだ。まっすぐ前を見る稔麿を見ながら、これから非現実の世界に入っていくのだ、と気合いを入れる。足音まで計算されてるのが本当にツボ。

19日に初めて見たときからの謎「冒頭の近藤さんは何を言ってるのか」ってのがようやくわかった。これ、近藤章の冒頭とかぶせてるんじゃないかなぁ...? 「坂本龍馬を斬ったのは、」から始まる一連の台詞のような気がする。というのも、芹沢章と土方章で時系列的に重なる部分で口パクが多用されてたから、その理屈で考えると別の章の同じシーンを被せてるんじゃないかなぁと考えた。違ったらどうしよう...謎が残されたままだ...。合ってると思うんだけど不安になってきた。

この話が一番悩ましいというか、どう取ればいいんだろう、っていつも悩む。土方が人と獣の境界線をふらふらと行き来してて、土方章の最後~沖田章で「人」として「武士」として生きることを決める...話...かなぁ......。何かを揺さぶられるんだが、それが何かがまだわからない。笑い声と「うるさァい」がいつも怖い。常に怖い。自分でも制御できてないっぽいところが本当に怖い。人を守るために刀を取ったはずなのに、それがどんどん歪んでいくさまを見るのはとてもしんどい...。

「負けたくないから刀を取った」というのが源さんと土方の共通点だ。けれど、負けないための方法が多分正反対な気がする。源さんは「負けたくない、されど必ずしも勝ちたいわけでもない」って感じ。常に大勝を挙げたいというよりは、とにかく負けないためにいろいろな策を巡らせる人。対して土方は、負けないためにひたすら勝ち抜いていきたいタイプ。誰よりも強い男になりたい、という願いに、尊皇攘夷とか人を守るためとかそういう理屈がくっついていった感じがする。すごく単純な願いなのに、それを叶えるためにいろいろなものが捻じ曲げられていくのが辛い。生きるって難しい...。

立川は常にかわいい。かわいさが変わらない...尊い...立川にお世話されたい。どこかのシーンで羽織がくちゃくちゃになって肩からずり落ちてしまって、それをヨイショヨイショってこっそり直してたのが最高に可愛い立川でした。基本的に動きがどたばたあたふたしてるのがかわいい...。そういえば名乗りのシーン直前で笠がずり落ちてしまって、そのまま名乗ってたのがかわ...かっこよかったです。がむしゃらな感じが出てた。

沖田総司の純愛

この章も解釈が変わった。山南さんと沖田の関係が謎だった初回→暁を見て改めて2人の仲良し具合を知ってから臨んだ2,3回目ときて、今回は沖田は獣から人間になって、自分が背負う業を初めて意識したんじゃないかなぁ...と気づいた。

沖田はもともと?穏やかな人で、できたら刀は抜きたくないと思っている。けれど、相手から攻撃されたりして血を見ると豹変する。「...野郎、」の冷え冷えした声がほんとに怖い。近藤章の手合わせシーンから考えると、豹変している時は多分我を忘れている気がする。カッとなると何をするかわからないところが沖田の強さだし弱いところでもあるというか...。それで何人もの人を斬ってきた。だから彼は「斬った人の無念」を背負える、と考えてて、近藤や土方、そして山南さんの分まで背負おうとする。けれど最後、山南さんを介錯するとき、彼は全くの正気のままだ。そうして初めて「人を斬ることの重さ」を、山南さんが「私には背負えない」と言った理由を知ったんじゃないかなぁ...。背負ったつもりになっていたけれど、実際は直視していないだけだった、というのを、よりにもよって山南さんを斬ることで気づいてしまった。これからどうしたらいいかわからない。困ったときに頼れそうな山南さんはもういない。だって自分が斬ってしまったから。うわなんだこれしんどい...。呆然とするしかない...。こんな重たい意味じゃないよね...? 自分で考えておいて自分で信じたくない。

ラストの殺陣、今回は稔麿が勝つんじゃないかと思ってしまった。なんだろう...映像・舞台問わず敵側のファンにありがちな現象として「今日は勝てそうな気がする」てのがあるんだけど、初めてその立場を体験した。ここの殺陣、気がついたら息止まってた。瞬きもしてなかったかもしれない。これまでと全然違う...なんだこれ...。本当にどっちかが死ぬんじゃないかと思った。もしくは相打ちになるか。誰も死ななくてよかった......。なんだったんだろう。ここの衝撃でいろいろなものが吹っ飛んだ。双方が自分の全部をこの一瞬に賭けていたのかもしれない。これまで見た殺陣の中で一番圧された...。「生きる」という事象を真正面から叩きつけられたような...。稔麿が倒れたときに立ち上がりそうになった。稔麿生きててよかった...。互いに背負ったもの、譲れないものを真っ向からぶつけ合ってた。ここを表す言葉がない...。凄まじい、という言葉では全然足りない。何も表せていない。

ラストに限らず池田屋の殺陣が全部変わってたように思う。変わった、というか、グレードアップした...?うーん違うな、ありきたりの言葉で言うなら全員が命懸けだった。永倉が手を切られた後、鉢巻を使って刀を手にくくりつけてたのを覚えている。本当に誰か死んじゃうんじゃないかってハラハラした。なんだったんだろうほんとに......。

なぜ生きるのか、なぜ刀を取るのか、それを自問自答しながら生きていく彼らが眩しかった。

まとめて

書き始めてから2時間以上経ってる...。なんか、この作品は「戦ってる」って感じがする。他の作品は、見たことや感じたことを忘れないように書き留めておこう、というきっかけなんだけれど、この作品だけは何かが違う。私なりの戦い方でぶつかっていっているような...? 5×10のフィールドが彼らの戦場なら、私の戦場はここにあるのかもしれない、なんてことを考える。そのくらい消耗するんだよな...なんなんだろう。生きるってどういうことなんだろうって毎日考える。全力で生きた彼らに応えたい一心で言葉を作り出しているような、誰かに背中を押されているような気がする。これまでにない圧倒のされ方だ...。消化するまでに少しかかりそう。

ほんとに、生きるってなんなんだろうなぁ。

終演後物販

マチソワともに同じメンバーだった...かなぁ? わちゃわちゃしてた。よりつぐくんが列整理してくれた。ありがとうございます。そして新井さんが寂しそうに覗いてたのに気づいて爆笑した。見るたびに新井さんが好きになる。スタッフさんも気づいて物販メンバーに加わってた。おめでとうございます。

マチネはなおきくん・なおやくんのなおなおコンビ。終演後物販は常に「対応してくださった方のブロマイドを買う」と決めてたんだけど、そしたら土方セットがなくてなおきくんを探しに行かせてしまった...すみませんありがとうございます...。結局その時点で昼の分が完売してたっぽい。ほんとすみません。なおやくんとよりつぐくん・てんまくんのブロマイド買いました。

ソワレはあかりちゃんが登場した時の沸きっぷりがすごかった。みんな「おおおおお~~~~~~~!」って盛り上がった。列整理もよりつぐくん・にーやんさん・途中から新井さんの3人で、足元のバミリ剥がさなきゃ~とか、裏話とかちょこちょこ話してくれて楽しかった。本当にお疲れ様です。

ソワレで対応していただいたのはまーくんさん・てんまくんのペア。てんまくんのブロマイドはよりつぐくんとセットで、1枚目(買うときに見えてるもの)がよりつぐくんなんだけど、まーくんさんが「じゃあてんまを上にしとくね~」ってさらっと入れ替えてくださった。対応が神なのめっちゃわかる...。たまたま隣によりつぐくんがいて「なんでや~なんで俺やないんや~」って拗ねてたので昼に買ったことを伝えたら「なら許す!」と許されました。ありがとうございます。

はぁーーーーーーーーーー...これで終わりかぁ。あっという間の幻みたいだ。

追記

(2017/12/28)

最後の池田屋討ち入りで原田が山芋鉢巻だったことはぜひとも残さねばならない...。全然笑うところじゃないんだが出てきた瞬間にちょっとフフってなった。千秋楽だけだと思うんだ。なぜそれをしてきた新井さん…w

山南さんが浅葱色の羽織に腕を通していたシーンがあったかをちょっと注目していた。沖田が「魔物が潜む」と言った羽織。山南さんはだいたい肩に羽織っていたから、それって魔物に負けないというか、魔物に取り込まれないための山南さんなりの意思表示なのかもしれないなぁ...と思って。4つ通して見たところ、近藤章で初めて羽織を受け取った後と、古高を拷問するシーンだけ腕を通していた。OPやEDは演出の都合もあるだろうから省くと、この2つしかないのか...。初めて受け取った時は魔物だなんて思っていなかったけれど、その羽織を着ている人=敵(悪人)とみなされるようになってからは基本的に肩にかけるか、畳んで持っている。古高を拷問するときは、わざと悪人になろうとしてたってことかなぁ。そうだったらなんか悲しい。楽後にとっくんさんが「山南敬助の○○」だったら...? と問いかけていたのもあってちょっと考え込んでしまった。

私なら「矜持」を選ぶかなー。

最後にこれは単なるメモで、松陰先生の教えはここが出典。

www.yoshida-shoin.com

死ぬ間際にこれだけの言葉を残せるってすごい...。松陰先生中心に何か1作見てみたくなった。

*1:あえて