行く末トーキー

はじめからはじめよ

優しさ ― 舞台「炎の蜃気楼昭和編 紅蓮坂ブルース」

まずは本日の即落ち2コマ(もどき)からご覧ください。

※ 写り込んでいるのは私の定期入れです。先日の誕生日にもらったので新品。

はい。6500円払えばミラージュの世界に行けるって実質無料。アフトもついてくるからまじで無料超えてる。実質無料って響きが好きだから積極的に使っていきたい。突然の午後休を承認してくださった上司まじでせんきゅーべりまっち。この御恩はきっちり労働で返すぜべいべー。期待してくれよな!

観劇の記録

  • タイトル:炎の蜃気楼昭和編 紅蓮坂ブルース
  • 日時:2017年10月16日 14時
  • 場所:THEATRE 1010

今回は初っ端からネタバレ全開で行きます。

座席位置とか

2階上手。前と左が関係者ばっかりで私まで関係者みたいになってた。観劇史上最も適当な服装*1で行ったにも関わらず華やかな雰囲気に囲まれてしまった…!びっくりびっくり。

1回でもチケットを取ったことがある公演期間中は気を抜かないようにしよう。いやそもそも予定外に増やすなという話なんだけれど…無理じゃん? あの世界があと1回しか味わえないとか無理じゃん? 私は無理。円盤すら待てない。円盤じゃあ足りない。あの場にしかない何かが恋しい。シャブか何かかな…?

雑感(ネタバレあり)

※ 紅蓮坂の他に、ミラステ前作(夜叉衆ブギヴギ)まで、特にやどかりボレロのネタバレもあります。

直江の優しさ、景虎の優しさ

オペラグラスで覗いてしまうと直江病が発症するので、あえて全体を見るように、直江以外の人物に注目するようにしてみた。しかし直江が視線をダイソンしてしまうので無理だった。吸引力が変わらなさすぎる直江信綱。あなたって人は…!

何度か見に行った人曰く直江がどんどん変わっていっているとのことなのでそれも視線をダイソンしていく。確かに違う…どこがどう違うかと訊かれるとうまく答えられないんだけれど、何かが違う。確実に変わっている。直江の台詞で心に刺さるのが「なぜお前なんだ」と「虚像であってたまるか…!」なんだけど、この2つは土曜とは全然違った。特に後者。今までは絞り出すような、滲み出すような、静かだけれど裏に直江の体温と激情を感じるような言い方だった。それが今日は、ただ、ぽとりと、言葉が落ちた。本当は言うつもりがなかった、直江の本当に本当の、何も隠していない素の心がこぼれ落ちたように思えた。どっちも好き。400年生きてきて、こじれにこじらせた感情が、あの一瞬だけは何も捻れていなかった。直江信綱の優しいところ、まっすぐなところ、想う人にどこまでも一途である心が見えた。天を仰いだ。泣くとか泣かないとか、そういう反応すらできなかった。どれだけ一途な人なんだろう…。

その分、滲むような体温が「御意」にこもっていた。その直前で天を仰ぐ仕草がとても好きです。ミラステのほんとに最初、夜啼鳥で「…景虎様、とお呼びいたしまする」のあとの景虎様と対になってるように思う。

直江は優しい。優しいから弱い。弱いところを見せたくないから、自分への言葉をすべて拒絶する。そうしていればいつか、いつか離れてくれると期待している。そんな人なんだと思う。成人換生した「笠原尚紀」の分まで生きようとして、彼の人生を背負おうとして苦悩していた。その始まりが「やどかりボレロ」で、終わりが紅蓮坂ブルースだった。尚紀から引き継いだ記憶を見る勇気がなくて、和歌子との約束を思い出せなかった直江。これから親孝行を、というところで両親を失い、遺品をそっと持ち上げることしかできない直江。自分に課せられた使命ではなく自分の野心を責めるところが、どうしようもなく優しい人なんだなぁと思う。これまで何度換生したかはわからないけれど、その全員の人生を背負おうとしているのかもしれない。そうだとしたら、どれだけしんどい400年だったのかなぁ…と気が遠くなった。

景虎様も優しい。けれど、景虎様の優しさは直江のそれとは違う。だから景虎様は強い。詳細はうろ覚えなんだけれど、信長の乗った飛行機を落とさなかったときの会話が、直江と景虎様の違いを最もよく表しているように感じる。

直江「そのせいで死ぬ1000人のことは考えないんですか?」

景虎「今を生きる1000人を大事にできなくて、どうして未来の1000人を大事にできる」

直江は、現在であっても、未来であっても、1000人の人生をありありと想像できる人なのだろう。「笠原尚紀」を背負おうとして彼の人生を受け入れたときも、おそらく自分に嫌気がさすくらいには考え抜いたはずだ。それと同様の重みが全員にかかっていると察するから、直江は未来の1000人の人生を重んじようとする。そのために現在の1000人をどうしたらいいのかを言葉にできないところが、直江の弱さだ。きっと二者択一を迫られたときに迷う、それが直江の優しさであり弱さだ。

景虎は、あの時点で未来よりも現在を優先する決断を下している。信長を討つと決めたときに自分を含めた夜叉衆の未来を諦めている。それに、10回換生して10回の仮の人生を歩むなかで、ずっと初生人と向き合ってきたから、現在の1000人の重みを背負おうとしている。二者択一で絶対に迷わない、それが景虎の強さだ。

どっちがどうとかいう話ではなく、直江と景虎は互いを補うように存在しているからこそ、400年も主従(解散したと言いつつ実質主従のままだし)でいられたんだろう。…どうなんだろう。現時点でこのさきの未来を知らない(原作の進み具合は紅蓮坂ブルースから変わらず)からこんなことが言えるのかな。なんか未来と矛盾してたらごめんなさい。いろいろな方からKindleはPCでも閲覧できると教えてもらったので、落ち着いたら本編も読みます。今読み始めたら確実に直江病で死ぬ。せめて千秋楽までは生きていたいのでいのちだいじにします。今日わりと落ち着いているのは舞台から距離があったのとアフタートークでだいぶ回復したからです。

「生」と「終わり」

夜叉衆にとって死は終わりではない。これが上杉主従にとって救いでもあり、絶望でもある。改めてやどかりボレロを見直してから紅蓮坂に赴くと、言っていることが反転していて、直江病を発症しそうになる。今まで発作ゼロで文章を進めているのは努力の賜物です。実際は発作を起こしては消し、起こしては消しています。

やどかりボレロ、つまり今の上杉主従(加瀬賢三・笠原尚紀)が生まれる直前、直江(山口利之)は景虎の生を願った。景虎は直江の願いを受け入れつつ、心の底では終わりを願っていた。それが、紅蓮坂では構図が逆転する。「もう解放してくれ」と呻く直江に「生きて生きて生き延びろ」と願う景虎。こうして時系列を圧縮して書いてみると、景虎は直江(山口)の願いをただまっとうしようとしているだけだった。お前が生きろと願ったんだから逃げることは許さない、離れることは絶対に許さない。それが「行って為すべきことを為せ、直江信綱」につながるんだろうなぁ…山口利之も笠原尚紀も「直江信綱」という名で繋がっているから、景虎の「直江信綱」に込められた力に直江は従わざるを得ない。「御意」に至るまでの刹那に、直江はそのことを思い出し、自分がどれだけこの人のことを想っているかを悟ったのかもしれない。それが言葉でなく、天を仰ぐというたったひとつの仕草で表されているのだとしたら、情報量の圧縮率が高すぎて目眩がする。一つ一つの言葉が、所作が持つ重みが違う。それが400年生きてきた重みか…。平凡な言葉でしか表せない自分に嫌気が差す。叫んでいいならその瞬間に叫ぶよ、あの瞬間の私は無に等しいから何も言葉にできないけれど。

景虎様も、自分のことは信じていないのに直江のことは無条件に信頼しているんだろうなぁ。それが何よりもしんどい。

坂の続く先

ミラージュについていろいろ教えてくださるひかるさんのブログにこんな話があった。

そもそもこの紅蓮坂、登った先に何があるのかと皆登っているけれど、この坂は本当に登り坂なんだろうか。必死に登っているつもりだけれど下ってはいない?

どこに続く坂なのか 舞台「炎の蜃気楼昭和編 紅蓮坂ブルース」 - おかわりください

どこに続くのだろう。私は彼らの未来を知らない。本編で語られる「30年前」の出来事について知らない。知っているひかるさんが下り坂である可能性を指摘しているということは、…どうなんだろう?

本当に今手元にある情報だけで坂の先を考えるなら、今のところどうしようもない地獄しか待ち受けていないように見える。生を願い、終わらせない戦いを誓う景虎様も、夜叉衆の未来を捨ててしまった。直江に「生き延びろ」と願いながら、自分はとうに生への執着を持っていない。持っているのは、かつての直江が願った生それだけだ。登ろうとどれだけ足掻いても抜け出せずに落ちていく、地獄のような坂だ。上りも下りもない、ただ傾いているだけの坂。先など存在しない坂。それが紅蓮坂なのかもしれない。

あと1回。

あと1回、坂に赴くことができる。それを幸いと取るか不運と取るか、今はまだ決めかねている。

余談:明るい話

木端神

  • 13日アフタートークで落下
  • 14日(昼)カーテンコールで落下
  • 16日本編で落下
    • 「木端神、いっぱい用意しといてよかったな」(ぽろり)
    • その直後のてへぺろ☆ぽい仕草がかわいかったけれどそういう場合じゃないぞ!!!!
    • 全然笑うシーンじゃないのに吹いた

思念波(?)

  • 藤本さん(初代長秀役)が見に来てくれていた
  • 紳司さん「どうだった?涼(耳をすませる)」
    • 翔さん「楽屋で聞いてください」
  • 藤本さんから、カーテンコールでのハイタッチと背中とんとんは引き継いでくれ、とお願いされた話
    • 紳司さん「麻朝に訊いたらいいですよ!って快諾してくれた」
    • 紳司さん「どう?ちゃんと見てた?涼(耳をすませる)」
    • 翔さん「楽屋で訊いてくださいってば」
    • 紳司さん「…ん?何?(頭に指を当てる)」
    • 翔さん「思念波?思念波ですか?ポーズ違いますよ?」
    • 紳司さん「あちゃぁー(正しいポーズ)」
  • コメント後に「本日は誠に!」と〆ようとする紳司さん
    • 翔さん「ちょ!ちょっと奪わないでください!」
    • (笑って列が乱れてたので整列)
    • まーささん「本日は誠に!ありが……ねぇつっこむところだよここ?!」

アフタートーク

  • 詳細は円盤でご確認ください
  • 晶さん「人の弱いところを受け入れる強さって本当に強いんですよ! つえぇ女になりてぇなぁ!」
  • マサと社長のミラステにかける思いが嬉しかったなぁ
    • マサと社長で椅子分け合ってるのかわいい
    • チームレガーロ、お疲れ様でした!
  • ハンドウ「ウブな美奈子に春が来た~」
  • 信長と化す直江
    • 社長「チャカが怖くてXXX(聞き取れなかった)に店が出せるか!」
  • 翔さん「じゃ、本日は誠に、ってやって」
    • 平牧さん「…御意!」
    • 尊い(合掌)

*1:本当に12時ちょうどくらいまで行くつもりはなかったし、上司氏に半休いいっすか?って聞いたら断られる流れだと思ってた。二つ返事で承認されたので上司氏には本当に頭が上がらない…ここに転職してよかった…