行く末トーキー

はじめからはじめよ

不可逆 ― 劇団☆新感線「髑髏城の七人」Season 月(下弦の月)

やっと行って参りました~~~~~~!

観劇の記録

ネタバレと日替わりネタが含まれます。節分だった。

劇場について

きれいでハイテクなアイアっぽいなと思った。駅から遠くて、周りに絶妙に何もないところとか、仮設っぽいところとか、お手洗いがプレハブっぽいところとか。お手洗いの回転率が異様に高かった。スタッフさん訓練されてた。ロビーにカフェがあったのがびっくりでした。

休憩中にD出口から出入りすると、薄暗いトンネルを抜ける感じがしてちょっとわくわくする。

座席は真ん中よりちょっと前くらいの下手。360度回転すると聞いていたから、この劇場に上下の概念はあるんだろうかと思っていたら普通に概念あった。

回転する客席

この劇場の特徴は、客席が回転することらしい。実際に赴いてみて、これは場面転換の都合を客席に押し付けた形なんだな...とスンとなった。確かにセットはものすごく豪華だし、これを人力の切り替えでどうにかするのは無理だ。でも、360度と言うからにはあちこちでいろんなことが起こりまくってて目が足りないよぉ~~~~~!ってなるのかと(勝手に)期待してたのでちょっとスン...だった......。客席の周り360度全部に何らかのセットが組まれているという意味だった。スン。

スクリーンの映像と加速度がだいたい一致してるから、回転中は鳥になって世界を俯瞰している気分が味わえたのは楽しかった。でもそれだけならテーマパークのアトラクションでいい訳だし...。回転するという事象とお芝居とがもうちょっと組み合わさったものが見てみたいな~って休憩中に考えてました。

雑感

客席が回るのも相まって、お芝居というよりはショーを見に来たような気分になっている。どこがどう違うのかというのはうまく説明できないんだけれど、なんとなく普段見ているものとは受け取り方が全然違う感じがする。どっちかというと映画やドラマを見てる時の感覚に近かった。

帰り道を辿りながら、何が違うのかな、とぼんやり考えていたところ、多分「不可逆なはずの事象」が可逆になってるからのような気がしてきた。

2幕の冒頭で、蘭兵衛が天魔王に夢見酒を盛られる。口移しの色っぽさはさておき、その後蘭兵衛の口元からは赤い雫が垂れているし、それが着物の胸元や袖を汚す。白い着物に赤い汚れだから、遠くから見てとても目立っていた。それが、カーテンコールでまた白い着物に戻って、汚れなんて初めからついていませんでしたと言わんばかりの存在感を示している。そこに、なんとなく、カットが入ったというか、本編との繋がりが断ち切られてるような気がした...んだと思う。

蘭兵衛(蘭丸)と血糊と言えば、刀ステ再演(大千秋楽)の蘭丸は、血糊マシマシ状態で臨んで、着物の襟元にも血糊がついてしまった。カーテンコールでは、着崩れや顔の血糊は直されていたけれど、襟元の血糊だけは薄く残っていた。あれ落ちるのかな...?と気になったので覚えている。それを覚えていたから、本編でついた汚れがカーテンコールで消えてしまったことが引っかかったんだろう。

着物以上にひっかかったのが、無界の里のセットだった。蘭兵衛(蘭丸)と天魔王がめちゃくちゃに破壊し、その時にふすまに血糊が吹き付いたはずなのに、最後には綺麗になっている。そこがなんか、やはり本編が細切れにされているように感じた。無界の里はあそこでめちゃくちゃに破壊されて、燃え尽きたはずなのに、何事もなかったかのように(非常口ランプは付いてる)戻ってくる。そこが、なんというか、有り体に言うなら、お前が見たものはただのマヤカシなんだよ、そんなのに夢中になって馬鹿じゃねーの、と横っ面を張られたような気分になった。十中八九私の考え過ぎなんだけどね。極楽太夫や天魔王が着替えて出てくるのはなんとも思わなかったわけだし。

天魔王はすごかったな...。今回のキャストの中で唯一顔と名前が一致している、かつ劇場で演じている姿を見たことがある人なのに、出てきたときは誰だかわからなかった。白塗りだし。見るたびに全然違う人になっているから、もしかして同姓同名の別人がそれぞれの舞台に出てるんじゃないかなと少し疑っている。そのくらい現実味がない。今回は親戚の家にある般若の面を思い出した...。寝る部屋に飾ってあって、布団に寝転がるとちょうど目が合うところにかかっているから、泊まりに行くときはいつも怖い思いをしていた。見た人が萎縮するというか、畏れるものがあった。捨之介に鎧を剥がされた後、ぺらぺらの心もとない体が出てきて、彼は彼なりに信長公がなし得なかった望みを叶えよう、天を掴もうと必死になっていて、そのためにあの仮面や鎧をまとって「ほんとう」を隠していたんじゃないかと切なくなった。ぺらぺらになった後も、捨之介と改めて対峙するときは、何倍も強く、大きく見えた。彼はサイズも可変らしい。役が憑依するというよりは、役に自分そのものを明け渡してしまって、自分自身は死んでしまったかのように見える。それが少し怖くて、彼のことを好きになりきれない部分がある。

ちゃんともさんを初めてまともに認識したのだけれど、この人顔がすごくいいですね。絵画的な良さがある。何気ない仕草がどれも絵になるというか...甲冑姿もいいけれどやっぱり着物姿が好きです。カーテンコールで太夫さんと仲良くしてたり、天魔王のマントさばきを真似しようとしてイマイチ決めきれなかったりしてたところがかわいかった...。でもそれですら絵になるので顔がいいってのは最強の免罪符ですよ。すごい。

一番好きだなって思ったのは渡京かなぁ。笑うしかない開き直り具合、手のひらの返しっぷりが機関銃状態で見ててむしろ気持ちがいい。ここまで居直られたらもう笑っちゃうしかないじゃん...w 頭がいいからこそ、絶妙なポイントでテノヒラクルーできるんだろうなぁ。手のひらはクルクルしてるけど「自分の命が何より大事」という原理原則が絶対にぶれないところが好きです。

その次くらいに贋鉄斎が好きです。というか好きにならざるを得ないでしょ...頭皮取れそうになっちゃうし、刀はさし間違えるし、台詞忘れるし。花咲かせるし。「忘れちゃったよぉ~~~~もぉ~~~~」ってぶっちゃけられたら、お芝居としては失敗だったとしてもあの場では大成功になっちゃう。好き。捨之介・霧丸と3人で刀を研ぎながら戦うシーンは、確かにそれが理想形なんだけど現実にやる人がどこにいるんだよ!...お前かよ!!!!ってなる。ひたすらに剣花道を極めようとする姿勢がぶっとんでて、見てて楽しかったです。

こんな感じかな? もう2時だよ~~~~~終演22時しかも豊洲は遠かった。川すごかったな...。川が出てきて雨が降り出した瞬間の水の匂いで、自分には想像もし得ない事柄が起きてるんだなってなんとなく感じました。