行く末トーキー

はじめからはじめよ

極悪人たちの寓話 ― ピカレスク◆セブン

観劇初めでした! 年の初めからすごくいいもの見た~!

観劇の記録

ネタバレあります~

座席位置など

観劇納めも池袋(あうるすぽっと)だったので駅からの既視感がすごい。

座席は後方のちょっと下手寄り。いえーい。ローチケではなくeplusで買ったからかもしれない。eplusは(履歴によると)薄ミュぶりで、薄ミュも下手寄りだったから多分上手神の加護が及んでないんだと思う。

サンシャイン劇場、1階でも後ろの方は傾斜がきっちりついてたから見やすかった。

雑感

少年社中の作品はモマぶりかな。モマがすごくよかったから軽率にチケットを取ったんだけど、今回もすごくよかった。相性がいいのかな...。社中さんの作品を見ると、小さい頃に夢中になって本を読んでた思い出が蘇る。今も夢中になって読んでるけど、あの頃のわくわく感、夢中になってる感はだいぶ薄れちゃったからなぁ。ページをめくる度にわくわくしてたなぁ...。ページの外側で、登場人物たちがどんなことをしてるのか気になったり、一旦「おしまい」で終わった後にもお話が続いてるんだろうな~っていろんなことを考えたりした。その「物語は完結してるけど、その世界は今も広がってる」って感覚がちょうど一致してるのかもしれない。

そういえば冒頭の客電が落ちてからかかった曲ってモマのときと同じフレーズ使ってたよね...? 社中のテーマか何かなのかなぁ。

この話に出てくる人たちは基本的に悪人だ。けれど、話が進むごとに、それぞれが「自分の望み」のために生きてきた結果だとわかる。そう考えると「この世にいるのは悪人ばかり」なのも当たり前かもしれない。望みがぶつかりあうことなんて当たり前だからねぇ...。マクベスの豹変っぷりがよかったなぁ。最初はただのゲスい野郎だったのに、マクベス夫人が出てきたあたりから様子がおかしくなって、終盤ではただ自分のしてきたことを守りたいがために剣を振るう。悲劇と呼ぶな!憐れむな!笑え!と叫ぶところが、もう本当にどうしようもない運命に振り回されてるみたいで...かわいそう、ではないんだけど、なんというか、どうしようもなさ、やるせなさを感じてしんどくなった。というか私はまた鈴木勝吾さんが人間じゃない役を演じてるところを見たのか。 この人の演じる「ゲスくて脆い」感情がとても好きだなぁと思う。人間じゃない役なのに人間以上に人間らしいところとか。人間じゃない役を人間が演じる意味を感じるからかな。自分で自分を追い詰めてズタボロになって、もう負けが見えてるってなったときの「馬鹿かお前?!」がスパーンとこちらまで届いてきて気持ちよかったなぁ。字面だけ見るとただのツッコミなんだけど、この台詞が出る場面が好きだ。これに答えるイエミツもかっこいい。そのちょっと前から「俺は」って言って、将軍になる決意、マクベスの全部を背負う決意を固めているのに、ここだけは「だって僕馬鹿だもん!!!!!!」と、黒く染まる前の「何もできない、優しい人間」の一面が出る。黒いは白い、白いは黒い。黒く染まった後でも、染まる前のことをしっかり残してる、というのがイエミツの天下人たる理由なのかな。途方もないお人好しでちょっと馬鹿なのかもしれないけど、この後の日の本は安泰な気がする。そうりだいじんのいる時代もどうにかなるといいんだけど...。

マクベス×ジャックザリッパー...よかったです...。始まりこそ最悪も最悪だけど、最終的に「私はお前の孤独を終わらせたいだけだ!」となるのが胸熱すぎて泣いた。地獄で幸せになって欲しい(矛盾)。自分の本性や望みを引き出し、それを選ぶ強さをマクベスが示したからこそのジャックの反応が...。マクベスが本当は何を望んでるかを察したからこそ本気で殺しにかかる、というところに、悪が悪である所以を見た気がした。本当にほしいものを選ぶときって、裏を返せば、それ以外の全てを切り捨てるってことなんだよなぁ。後者を取り出すとただの悪にしか見えないけれど、本当はほんのささやかな望みを叶えたいだけなのかもしれない。なんともやるせない。

テーマは激重なんだけど、ちょこちょこ笑えるところも挟まってて疲れないのがすごい。会いたくて会いたくて震えるヒデヨシとか、そうりだいじんは全般的に笑いを取りに来てた。ぬらりひょんの名前ネタも出る度に笑った...w ぬらりひんまで言うならもうちょい頑張れよ、とか、ナッツヘッドってもはや何も残ってないじゃんwとか。

あとピーターパンとフック船長のペアも好きだなぁ。L字型でゆっくりとスクワットしてるところで笑って、終盤でまたL字型出てきたら条件反射で笑っちゃう。永遠の敵同士のはずなのになんだかんだでフック船長がピーターパンを助けてるのもいい。ネバーランドで決着をつけなきゃいけないから、今ここでピーターパンが倒れたら駄目なんだろうな。ピーターパンは序盤で自分が悪人であることを認めない。それは彼が永遠の子供であるがゆえの冷酷さ、無邪気な素直さの表われなのかもしれない。自分の望みを素直に叶えようとして、その裏で何が起きてるかを知らない、知ろうとしない。「おとな」であるフック船長はそのへんも全部了承済みでピーターパンのことを認めてる感じがした。彼もいい立ち位置だったなぁ。望むものはピーターパンと戦うための剣1本だけ。他はこの手(フック)じゃつかめないからいらない。ある意味ぬらりひょんと近い存在だった。

ピーターパンが椎名さんだったこと全然気が付かなかったー! あの人すごくよかったなぁ、名前なんだろう...と確認したときにめっちゃびびった。やっぱり1作品で縁があったくらいじゃ見つけられないかぁ。

登場人物たちを引き立てるのが「色」の存在。衣装が全員カラフルで、舞台の背景もステンドグラス風だから、ぱっと見ると絵本の世界に入ってしまったように思える。それがラスト、雪が降り出して、マクベスとイエミツの一騎打ちになるところから色が失せるってのがしびれた...。ここの照明すごい。マクベスの新たな予言「白が黒に染まらぬ限り、お前は討たれることはない」に忠実に、イエミツがちょっとずつ黒くなっていくのもいい。羽織を脱いだら、腰のあたり、つまり自分から見えづらいところが黒いっていう発想がすごいなと思った。この時点ではイエミツは覚悟を決めてないけれど、内心では「やらなきゃいけない」って思ってるんだろうなと読み取った。マクベスの魔女は見えるようになってるけれど、きっと全員の心の中に魔女は住んでいて、自分の本当の望みを叶えるために少しずつ予言をしているのかもしれない。いやでもあのモノクロで雪が降る世界は本当にすごかったな...。一瞬で色が失せるから鳥肌立った...。こんなことできるんだ。

カーテンコールの挨拶が「本日はどうもありがとうございました!」なのもちょっとフランクな感じで好き。「誠に」じゃなくて「どうも」なところ。「誠に」に慣れてるから、聞くとオッてなる。客席との距離を近づけたい人たちなのかもしれない。

新年1作目からいいものを見ました!社中さん20周年おめでとうございます!