行く末トーキー

はじめからはじめよ

箱庭 ー 個人的「あんさんぶるスターズ!」考

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流行に乗ってお題箱作りました。何かあればお気軽にどうぞ。基本ブログで返答すると思います。askはやってません。

みやまさんのお題箱

本題

いろいろな経緯があり(後述)、現在のあんスタ考察を記事にまとめることになった!ので書く!

カテゴリに適切なものがないのでとりあえず壁打ちにしておいた。内容もそれに準じたものになるんじゃないかな。

前提

  • あんスタ歴1年未満のド新規
  • 好きなユニットは紅月
  • 好きな部活は海洋生物部
  • 推しキャラなし(強いて言うなら紅月の3人)
    • 神崎の同級生または後輩になって先輩2人について語り合いたい系転校生
  • メインストーリー読破済
  • イベントストーリーは以下を読んでいる
    • 決別!思い出と喧嘩祭
    • 反逆!王の騎行
    • 光輝 騎士たちのスターライトフェスティバル
    • 追憶 それぞれのクロスロード
    • 競争!夢ノ咲学院体育祭3
    • ドロップ 遠い海とアクアリウム
    • 追憶 モノクロのチェックメイト
  • ノベライズは3巻(皇帝の帰還)のみ所持
    • Lionheart読破済
  • ユニットごとのファンブックは紅月のみ所持
  • ユニットソングCDについてたミニドラマは以下ユニットのみ確認済
    • Knights
    • 紅月
    • fine
    • Ra * bits

経緯

  • あんステ推しが出ることがわかる
  • 予習のためダウンロード
  • 「反逆!王の騎行」を読む
  • ラニーナさんに「チェックメイトを読むといい」というアドバイスを受ける
    • 復刻イベントにはまだ来てないので内容を教えてもらう
    • 読み終えたあと「感想書くね!」という(この記事の動機)
  • ノベライズ・メインストーリー読破
  • あんステ

てことで

あんスタ始めよっかな~どうしようかな~って人はラニさんの副音声つき記事を読んだほうがいいと思います!!ダイレクトマーケティング

qvq.hateblo.jp

こっちの記事は私がプレイしてきた感想です。プラスなこと以外にも書くから始めるかどうかの参考にはならないと思う。

「箱庭」の意味

メインストーリーを読み終えた直後に浮かんだが「箱庭で大騒ぎしてるだけだな」という至って簡素な一言だった。最近は別の高校のユニット(キャラクター)も登場したけれど、原則としてこの作品に出てくるキャラクターはほぼ全員が夢ノ咲学院に所属している。そこから外に出ることはないし、あったとしても何らかの形で学院の保護を受けている…らしい。らしい、というのは、直接的な根拠になるような描写がないからだ。ミニドラマでは「職員室に行ったらついでに仕事の話を受けた」という言動があるから、おそらく学院側で一旦仕事を受けて各ユニットに引き渡しているんだろうと推測している。それから、メインストーリーにあるこの台詞からも、生徒が保護されている様子が伺える。

「失敗しても、謝れば許される。どれだけ転んで泥に塗れても、涼しい顔でいられる。丁寧に前進を洗われ、新しい『おべべ』を着せられて、また歩いていける」

挑発しているわけでも、意地悪を言っているわけでもない。

完全に見下しているような、距離が、溝がある口調で――椚先生は言った。

「よかったですね、蓮巳くん。『次』がある、子供で」

(あんさんぶるスターズ!皇帝の帰還 P114)

最初にこの台詞を読んだときは社会人になるとこの台詞の重みが変わるよなぁ…と考えてしまった。『次』って基本的にないんだよね。若手俳優の話題と無理やり絡めるなら、炎上が近い話題なんじゃないかな。炎上する原因や経路は様々だから一概には言えないけれど、たいていは炎上するとあんまり関係ない人にまで「ああ、あの時こういう話題で…」と記憶に残る*1。一度ついたマイナスイメージはそう簡単には覆らない。その点が『次』のなさに通じているように思う。けれど彼らあんスタのアイドルは(手段はよくわからないが)失敗をしてもそれが自分の傷にならない環境に生きている。学院の中でどれだけ騒ごうとも、それが外に伝わることはないようだ。生徒会が支配していたS1にTrickStarが逆転を仕掛ける際に、観客がその事情を理解していないことを逆手に取ったことからも学院が箱庭として成立していることがわかる。

だから、メインストーリーを読み終えたときも「箱庭」以上の感想が出てこなかった。

「外」を知った上で「箱庭」に入るということ

あんスタのアイドルたちは、全員が全員箱庭しか知らないわけではない。箱庭の外にいたことがある=現実の芸能界を生きていたことがある・今まさに生きているキャラクターも存在する。知る限りでは瀬名泉・鳴上嵐・遊木真の3人はモデルとしてそれなりに活躍した後で学院に入学しているし、月永レオは別の名義で作曲活動をしている。他にも何人かいるかもしれないが私はまだわからないのでこの4人に限定して話を進める。なぜこの4人は学院に入学したのだろう。レオは「普通の勉強は苦手」と言っていて、自分の特技が活かせる場所を選んだ。他3人はわからない。ぼんやりと描かれているけれど、「こういう理由だから」と確定できるほどの言動は今のところ見ていない。まぁそれは大きな話題ではないので一旦保留とする。

気になるのは、これら4人が箱庭の外=現実の芸能界を知りながら、そこに影響を及ぼさない学院内で過ごしていて、外に出ることを望んでいないことだ。うーんなんか違うな……なんて言えばいいんだろう…4人とも内心はともかく実績として積み上げたものがあるのに、それを放置して学院内に留まっている理由がよくわからない。遊木真についてはメインストーリーでちょっと触れられてるからまだわかる。一番わからないのは瀬名泉だ。彼がなぜ学院に入ったのか、なぜ学院にとどまるのか、なぜ箱庭に執着するのか、今はまだ全くわからない。遊木真への執着(これも結構不思議だなぁと思う)は学院にとどまる理由にこそなれど学院に入る理由にはならない。だって瀬名は遊木の先輩だから。それを言ったら遊木真はなぜ自分に異様に執着してくる先輩がいる学校を選んだのかという話で…それこそ勉学のためだけなら通信制だってあるし。モデル活動をやめたかった、という動機でアイドルに転向するのはあんまり解決策になっていない気がする。

なんだかこのへんで「夢ノ咲学院」を中心としたストーリーが異様に歪んでるんじゃないかな、と考え始める。本来、アイドルを育てることにはもっといろいろな要素があったんじゃないか。それをゲームという箱に収めるためにいろいろ削ぎ落とした結果、描かれない歪みが生まれたような気がしてきた。

箱庭の「皇帝」― 天祥院英智というキャラクター

それが自分の中でほぼ確信に変わったのが、チェックメイト英智が言ったある言葉だ。

つむぎ「さぁ……それよりも、月永くんもすごい実力者ですけど、どうして『五奇人』に選ばなかったんです?」

(中略)

英智「それに、なんというか、彼とは普通に仲良くしていたいんだよね……。彼が僕のために作ってくれる曲が、あまりにも愛おしくて」

(追憶 モノクロのチェックメイト)

これを読んだとき、なんだ、皇帝って言ってもこの程度なんだ、と思ったことは確かだ。

英智は夢ノ咲学院の生徒会長で「皇帝」と呼ばれている。学院最強ユニット「fine」のリーダーで、病弱ながら確かな実力を持つ。メインストーリーではラスボス的な扱いだ。学院に出資している天祥院財閥の御曹司だからそのへんの圧力も使っていろいろな策を講じている様子がある。「五奇人」と呼ばれる5人がどのくらい学院に影響を及ぼしていたのか(あるいはいなかったのか)は今の私には分からないが、その状況を憂えて逆転の一手をしかけようとしていた、というのがチェックメイトの時系列だ。メインストーリーでのやり口から考えれば、英智は手加減をしない質だ、と思う。それが、学院改革の大きな障害になるだろう人物を特定する際に私情を挟んだのだ。この一言があったせいで、英智のなした改革が皇帝・御曹司とはいえ所詮は17歳(16歳?)の子供のやったこと、というはりぼてに見えてしまった。結局は気に入らないから変えてしまえ、という幼いわがままにすぎなかったんじゃないか、それを実現するだけの財力があったからなるようになっただけじゃないか。箱庭の中を変えただけで外側からは何も変わってないんじゃないか。

けれど、これって多分「あんさんぶるスターズ!」というゲームが持つ限界でもあるのかな、と考えてしまった。

癒着、飽和する箱庭

あんスタの中のストーリーは、転校生が転入してきた1年間を中心に、追憶と呼ばれるその前の1年程度をあわせて広がっている。メインストーリー以外の話はイベントストーリーという形で随時補完されていく。この形式がある限りいつかは箱庭が破綻するんじゃないかな、となんとなく考えている。

というのも、1ヶ月に1つのストーリーがあったとして、中心の時間軸におけるストーリーは12個がせいぜいだ。けれど「ゲーム」として成立させてそれなりのDAUやら課金額やらを上げ続けるには、イベントを12回やっただけでは全然足りない。現に、この時点で実施済のイベントは50以上ある。じゃあどうやってその差分を埋めていくかというと、1年間をひたすら繰り返すのだ。同じ時期の話でも、ユニットを変え視点を変え、異なる「イベントストーリー」として提供する。これによって思いもよらない関係が明らかになるなど、ユーザにとってメリットがある。この点をあんスタのいいところとして挙げている記事も見かけた。

ただ、私にはこれが薄気味悪い状況にしか思えない。視点の異なる話が出てきて既存キャラの新しい一面が見られることではない、物語が(転校生が2年生のときの)1年分から先に進まないことがものすごく薄気味悪い。下手なホラーより恐ろしいと思う。

高校というのは、現実でも箱庭化しやすい場所だと思う。私の高校時代もなかなかに煮詰まった状態だった。けれど、高校は卒業するもので、いつか強制的に箱庭から外に出される時が来る。夢ノ咲学院にはそれがない。返礼祭という卒業っぽいイベントはあるものの、その後が描かれることはない。3年生がいなくなって、1年生と2年生が進級して、新入生が入ってきて、という当たり前の流れが存在しない。その結果、夢ノ咲学院は出口がない箱庭と化している。ただひたすら違う視点の物語を描き続けて、実際は学院の外には影響せず、箱庭の中だけで物語が育ち続ける。まるで醒めることのない夢を見ているようだ。彼らはアイドルを目指して(一部除く)入学したのに、永遠にアイドルになることができない。いつまでもいつまでも子供のまま、未熟なまま1年間を繰り返している。これが、商売上、ゲームシステム上の限界なんだと思う。あるキャラクターを卒業させて「もう出ません」なんて言ったらそのキャラクターについたファンはゲームから離れるし、新規ファンもつかない。その時卒業しなかったキャラクターのファンも自分の好きなキャラクターがいついなくなるかを数えながら過ごさなくてはならない。それではゲームとして運営していけない。売り切り型ならともかく、終了が明示されず絶えず課金を促すように設計しなければならないアプリゲームとしては、キャラクターを卒業させることに何のメリットもない。だから、プレイヤー(転校生)は彼らが立派なアイドルになるためにプロデュースしているのに、彼らがアイドルとして外に出る日は来ない。外に出ているようにみえるときも、ほとんどの場合学院の保護を受けた状態、つまり箱庭の外には出ていない。

じゃあ、あんスタにおいてアイドルを育てるってどういうこと? と思ってしまったのだ。

たかがゲームに考えすぎじゃないか、とも思う。ただ、私は毎日毎日鏡に向かって「お前は誰だ」と問い続けて自我を崩壊させたことがあるくらいには考えることが好きだ。だからこれはどうしようもない性分だと自分でも諦めている。*2

入ったら二度と出られない箱庭で、ただ過去(ゲーム外時間軸のこと・ゲーム内時間軸では現在もしくは未来)と矛盾しないように細心の注意を払った結果若干の歪みが生じた夢を見続ける。少しずつ少しずつ飽和していった先には何があるんだろうか。それを知りたいような、知りたくないような気分だ。少なくとも今は知りたくない。

ここまで書いて思ったけど、こう考えるとまどマギ叛逆っぽいね。出口のない悪夢だ。無限ループは安っぽいけどよくある手段だし。

*1:私はそういう話題があまり好きでないからわざわざ探してまで耳に入れようとは思わない。けれどどこからか漏れ伝わってくるものはあるし、そこから「そういう人なんだ」という色眼鏡がかかってしまった人もいないわけではない

*2:ちなみに鏡に問うのはやめたほうがいい。あれは都市伝説ではない。