行く末トーキー

はじめからはじめよ

食べることは生きること―舞台『東京喰種』

刀ステ100公演おめでとうございます。ここに書かないとタイミング逃しそうで…。3作目で100公演っていかに1作ごとの公演数が多いかを実感する。今作も無事駆け抜けてほしい。

刀ステの話題から始まったけれど今回は東京喰種を見てきました!いつも通りネタバレを多分に含んだ感想を書く!

観劇の記録

  • タイトル:舞台 東京喰種 ~或いは、超越的美食学をめぐる瞑想録~
  • 日時:2016年6月30日 19時~
  • 場所:シアター1010

トーリー

前回の舞台で原作の1巻をがっつりやって、今作は4巻冒頭「#031 依子」から5巻半ば「#046 灯火」までのエピソードを少し編集したストーリーだった。

一番大きいのは笛口親子のエピソードが舞台化されてないのでヒナミが出てこない。ついでにヘタレもいない。親子の話がないから、カネキがトーカに特訓を頼むきっかけは「ヒデを守るため」になってる。あとは喰種のレストランに行くシーンが若干端折られてて、ブックカフェ(に行ってハンカチスーハーする部分)がなくて大学で知り合う→そのままレストランへ、となっていた。ここは後で詳しく書く。

舞台オリジナル要素はニシキの眼鏡が姉からの贈り物ってことになってた(原作は特に言及されていない)。あと依子がトーカに作った料理は肉じゃがからサンドイッチになって、トーカの家に持ってくる→あんていくに持ってくる(トーカがカネキの傷の治りを不思議がって服をめくっていたところに鉢合わせて勘違い)に変更された。この依子の料理を食べるところもカネキの対応が結構違ってる。

ちょっとわからなかったのは、ウタとカネキが初対面扱いになってたこと。ウタは前舞台に出てたしマスクを作るシーンもあったのになぜ初対面になった…?

諸注意

前回の記事で「舞台化・アニメ化の情報をできるだけ避ける作品がある」と書いたけれど、東京喰種はまさしくそういう作品だった。それがいろいろな経緯があって*1成り行きでチケットを取り見に行った。だから、他の作品に比べて原作寄りの発言が多いと思う。

ちなみに一番好きなキャラは無印からならジューゾー。Reも含めるなら六月。

今の原作の流れがちょうど今回の舞台でやった話を思い出してウッッってなるところだから、舞台を見ながら原作がダブって勝手にウッッってなってた。それを語り始めると舞台の話までいけないし最新話ネタバレだし今のところ舞台とは関係ないから省略する。

座席位置

急きょ手に入れたチケットだから2階の端っこ。やっぱり上手。どうも自分で抑えるチケットは上手寄りばかりだ。ソルシエぶりの1010だけど2階席はやっぱり傾斜がすごくて立ち上がるとドキドキする。

感想

月山が月山だった。

これに尽きる。今回舞台を見るにあたってとりあえず前回の舞台をがっつり見て、アニメは途中まで(今回の話あたりまで)見てから臨んだけれど、月山が本当に3次元になってた。なんだかんだで佐々木さんを舞台で見かける回数が増えているんだけど*2、いつ見ても「誰だお前」って思う。憑依型…というのかな。それよりはできる限り忠実に3次元化するとこうなります、という答えを見せつけられている感じがする。月山だけミュージカル東京喰種だった。特にレストランのシーンはアンサンブルの方々の格好もあいまって「生執事かな…?」と某子爵が頭をよぎった。一人だけ別世界に生きてるんだけど、月山自身がそういう人だから余計に似合ってるというか、まじで月山が現存してた。勢い余って個人ブロマイド買った。やっぱり月山だった。この人まじで何者なんだろう。刀ステ初演のリリイベで「生活感がない」とか「洋物の神」とか言われてるけどまさにそれ。生身の人間っぽくない。舞台のライトが当たっているときだけ生きている精霊かなんかなんじゃないかと思う。

そんな月山の無印での名シーンと言えばハンカチスーハーと「僕のだぞッッッ!!!」と「行かないではくれまいか」の3つだと勝手に思ってる。個人的にはヒナミやバンジョイとの絡みも好きだが名シーンを選べと言われたらこの3つになる。

で、ハンカチスーハーである。あれで月山のキャラが確定したんじゃないかな。初めて読んだときは爆笑した。だから、月山が出ると聞いてあのシーンが見られるのか、と思って少し期待していたらすんなりレストランに行ったのでがっかりした。名シーンが見られないのかと思っていたところで例のシーンである。レストランに来たカネキがシャワーを浴びて着替えるところだ。原作での月山はカネキと別行動なんだけど、舞台では壁越しに立っていて(カネキは見えない)、時折ドアが少しだけ開いて服を籠に入れるシーンになってた。そして!!!ここで!!!ハンカチではなくカネキクゥンのシャツをスーハーする月山がいた。爆笑した。まずシャツを手に取るまでが長い。その時点で腹筋がやばい。原作の流れを知ってる人からすればハンカチの代わりにここでスーハー来るか!と勘づくだろうから流れが読めて余計に腹筋が痛い。そしてシャツを手に取り…舞台の中央によたよたと進み出て…顔に…当てたーーーーーーーーー!!!!!キターーーーーーー!!!!!仁王立ちだーーーーーーーーー!!!!

爆笑した。

シチュエーションだけで笑えるのに後ろにプロジェクションマッピングで大きく「スーハー」って出るから余計に笑った。今まで見てきた中で一番いいプロジェクションマッピングだ。あとハンカチスーハーのコマを忠実に(ハンカチはシャツになってるけど)再現したマッピングも腹筋が鍛えられた。このシーンをもう1回見たいがためにチケットもう1枚買ったくらいには笑った。すさまじかった。

わがままを言えば、あのハンカチは後ほど再登場してもう一度スーハーされるからハンカチも何かのきっかけで入手してほしい。あとパンツ。パンツはReだったか。

ここまで月山の話しかしてない。いやほんとサブタイトルに美食と書かれるだけあった。月山が主役だった。

真面目に行こう。

ニシキ役の鈴木勝吾さんは回想での幼い演技がすごかった。「姉ちゃん」→「姉さん」→「姉貴」の呼び方の声色が全然違う*3。あと貴未を襲うところの迫力がすごい。近い。そのあと「…やめた」の後で口元が真っ赤になってるのがぞわっと来た。1巻でトーカが「そしてアンタは彼を食い散らかしたあとで後悔するの 血と臓物の海の上で」って言ってるんだけど、多分ニシキもあのまま貴未を食べたら海の上で後悔するけれど、その時も口元はこのくらい赤いんだろうなと察した。

そう、この舞台は「食べる」という演出が多い。喰種と人の違いが「食べられるもの」に表れるからだし、今回のメインは美食家=月山とニシキと貴未だから当たり前なんだけど、それを生身の人間が演じるというところにとても惹かれた。

どういう方法を使っているのかはわからないけれど、ニシキが貴未を襲ったときと、トーカがカネキを食べたときは、貴未とカネキの肩から血が流れていた。べたっと付着している感じではなくまさに「流れていた」。月山に襲われた後の軽部さんも血が「流れていた」。生身の人間の肩や目から血が流れているのである。それを見たとき、確かに「喰種は人間を食べる」という作中の事実が腹落ちした。生きるために必要だから、口元を赤くしながら人の肉を食べる。けれど、月山以外の喰種は「おいしそう」に食べることはない。今回の捕食シーンはどちらも必要に迫られて、という流れだから当たり前かもしれないけれど、改めて「食べる」って何なんだろう、と考え込んでしまった。

対照的なのが依子のお弁当・サンドイッチを食べるトーカだ。喰種にとって人間の食べ物は毒に等しいから、吐き気をこらえて水で流し込んでようやく飲み込んでいる。どこまでの生々しい「食べる」所作があった。カネキはサンドイッチを口に入れるも吐き出してしまう。普通の喰種ならその反応が正しいんだけど、ここだけは飲み込んでほしかったなぁ……「…ごめん」という台詞はよかったけれど、ここはトーカが依子をどれだけ大事に思っているかを示すシーンだから、吐き出すくらいなら食べてほしくなかったなぁ……原作の台詞じゃないけれど依子の料理がもったいないよ……

原作厨の自分がめんどくさいな!

生きるために食べるのだけれど、それって「生きているもの」を殺してるんだなというのが、肩から流れる血と赤い口元から読み取ってしまって、見終わった後しばらくは少し気分がすぐれなかった。

1つだけ遠くから見てわからなかったところがあるから、次見るのが楽しみだ。

*1:リンクはしないけれど記事は残ってる

*2:追っているわけではないけれどわりとよく見かける人という位置づけ

*3:それを見ながら薄ミュLIVE2バクステの「誰じゃお前は」を思い出していたのは秘密だ